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    第596号

    気管支ぜんそく治療の進歩とそれを最大限に享受するための「患者学」③

    国際医療福祉大学医学部呼吸器内科学教授 黨 康夫先生

    新しい治療薬~バイオ製剤とは

     重症ぜんそくには、昔は経口ステロイドや注射薬が処方されていました。全身投与で、驚くほど効くのですが、副作用がジワジワと出てきて、高血圧や糖尿病、骨粗しょう症、感染にも弱くなります。吸入ステロイドは安全ですが、飲み薬や注射を長期に使うと、副作用の危険があります。

     そこで出てきたのがバイオ製剤です。ぜんそくの原因である体内の特定物質を中和する抗体製剤で、ステロイド特有の副作用は生じません。注射で打つバイオ製剤は体中に行き渡るため、ぜんそくだけでなく、皮膚炎や鼻炎、食物アレルギーなど、ほかのアレルギー性疾患にもおまけの効果が出るという特徴があります。

     元気な人に病原体がつくと、肺炎になりますが、抗生物質を打って、病原体を追い出すわけです。これが肺炎の治療法です。それに対してぜんそくは、体内のいろいろな物質が原因で起こります。考え方としては肺炎治療と類似しており、バイオ製剤を打つことで毒消ししようという治し方です。バイオ製剤はごく最近の治療法で、しかも重症の方にしか使えませんが、原因そのものを中和・解毒していますので、理想に近い本質的な治療かもしれません。

    バイオ製剤のメリット・デメリット

     臨床テストとして、相当状態が悪く、がっちり治療をしている患者さんたちに、あるバイオ製剤を導入したところ、状態が劇的に改善しました。つぼにはまると、ものすごく効く薬です。もちろん、全員に効くわけではなく、打つ前と全く変わらないというケースも起こり得ます。

     バイオ製剤のいちばんの問題点は価格が高いことです。バイオ製剤の注射を1カ月ごとに打つと、数万から数十万円かかり、保険適用でも数万円程度の可能性があります。けれども、それで発作がパタッとなくなってコントロールが良好になれば、本人も楽な上、緊急受診や入院もなくなります。

     重症患者に限っては、導入を見合わせた場合、予定外受診や入院を繰り返して苦しさが続けば、結局はバイオに匹敵するほどの高い医療費を払う結果になるかもしれません。今のところはまだ費用対効果のバランスになります。まだ多くの論文が出ていないため、どちらが正しい方向性かは言えませんが、すごく重症で頻繁に救急外来を受診している方や、年に何回も入院している方であれば、バイオを導入したほうが、費用対効果比は高いかもしれません。

     軽症から中等症の方は今までの薬で十分コントロールができますので、あまりバイオ製剤に対して前のめりになる必要はありません。

     本当に重症な方にとっては、劇的に改善する切り札としての役割で、まだ価格も高く、適応がある患者さんを選ぶ薬というのが、今の立ち位置です。ただ、将来的にはバイオ製剤の治療法が安くなり、どなたでも選べるようになる時代が来るかもしれません。普及してくる可能性は十分あるかと思います。

    まとめ

     ぜんそくは気管支粘膜のアレルギー性炎症です。重要なのは、早めの治療と、治療の継続です。いちばん大事なのが継続です。あるヨーロッパの国では、ぜんそくの診断を受けても、処方された吸入薬を1年後に継続している人は2割程度で、8割はやめてしまうそうです。人間はそのくらい根気のない生き物ですが、やはり治療の継続は大切です。薬は忘れず吸入・内服し、先生と二人三脚で治療しましょう。

     環境整備でぜんそく発作の予防ができます。掃除はマスクをしっかりつけて、ハウスダストを吸入しないように気をつけてください。

     バイオ製剤の適用は、ごく一部の重症患者さんに限られますが、強い効果が得られ、いいのではないかと考えています。

     以上です。ご清聴まことにありがとうございました。

    (2020年11月8日 日本アレルギー友の会講演会より、採録 池田栄江)

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