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    第607号

    小児のアトピー性皮膚炎と食物アレルギー 最新の情報と今後の期待② 国立成育医療研究センターアレルギーセンター医長 山本 貴和子先生

    食物タンパク誘発胃腸炎への対応は。 

    誤食し嘔吐した際は、ぐったりとなり、顔面蒼白になる割合も高く、まれにICUに入る方もおられますが、即時型の食物アレルギーと違って、エピペンは打っても効きません。基本的には重症の症状がある場合はすぐ受診し、脱水に対する治療という対応になっています。 

    長期的な治療は原因の除去で、基本的には栄養不足に配慮しながら1年くらいは除去します。予後は悪くはないことが多いです。長期食物負荷試験で寛解を確認する場合が多く、だいたいの方が食べられるようになります。

    即時型食物アレルギーの検査法について。 

    普段から私たちは、子どもたちにより良い負担のない検査法や治療法を開発したいと思っています。血液検査をするのも大変です。いろいろな負担をなくしたいと思っています。経口食物負荷試験や、即時型アレルギーに対する経口免疫療法も負担が大きくなります。アレルギー症状によるメンタルヘルスへの影響もあり、主体となる子どもやご家族がポジティブに向き合えるように一緒にやっていきたいな、と思っています。 たとえば、多くの方が少なくとも年に1~2回する血液検査で、採血する部位にエムラパッチ(局所麻酔剤)を貼ると、1~2時間後の採血時には痛みが取れます。これで前向きにアレルギー検査を毎回できるようになる子もたくさんいます。採血が苦手なお子さんは、クリニックや病院で導入されていれば、緊急時はできませんが、予定の時は使ってみるといいと思います。 

    検査としては食物経口負荷試験も必要です。血液検査だけでは食物アレルギー症状が出るか確定はできません。血液検査ではIgE抗体の量だけを見ており、質も重要だからです。質とは、アレルゲンとIgE抗体の付きやすさで、たとえて言えば強力な磁石と微弱な磁石をイメージしてもらったら良いでしょう。アレルゲンに付きにくい弱い親和性だとほとんど反応せず、逆に、少量でも親和性が高いIgE抗体がたくさんあれば、クラス2程度でもアナフィラキシーになることがあります。このように、量と質が重要ですが、今の検査法は量のチェックのみです。徳島大学との研究で、量と質を両方組み合わせて調べた結果、より高い精度で食物経口負荷試験の結果とほぼ一致しました。今後の検査に役に立ちそうです。 

    とは言っても、IgE抗体は量しか見えず、その解決策の一つとして、IgE抗体の値に対応して食べられる量を決めた、センターの医師が作った対応表があります。たとえば「ED10」という数値だと、10%の人でアレルギー症状が誘発されると予想される量、といった数学的モデルです。自分のIgEの値に合わせて、参考にしながら安全に食物経口負荷試験をしていくことも可能になりそうです。年齢、湿疹のコントロール、その他いろいろな要素も反応に影響する可能性はありますが、それに合わせた食物経口負荷試験の量設定ができる日もくるかもしれません。 

    また、プロスタグランジンD2の代謝物(PGDM)の検査も研究しています。これは、アレルギー症状が出た時に体内に出て、その後に尿中に出てきます。したがって、アレルギー反応が強ければ強いほど、尿中にPGD2が高く出てくることがわかっています。センターでの研究では軽微な症状でも尿中PGDMが上昇していました。これはまだ研究レベルですが、食物経口負荷試験の負担をなるべく回避できる、安全な検査方法の開発に進めていきたいです。

    検査結果と原因食物の除去について。 

    治療の基本は最低限の原因食物の除去です。鶏卵アレルギーの免疫療法が始まる前で厳密に除去していた2007年の米国の報告では、IgE抗体価が50以上の高値だと、8歳時に鶏卵アレルギーが改善していたのは11%です。元来、IgE抗体価が高いほど治りにくく、低いと治りやすい傾向があり、すべてのお子さんが年齢とともに改善するわけではないことを示しています。自然に良くなるので待てば良いという声を聞きますが、本当に治るかどうかはわかりません。検査結果陽性という理由のみで、症状が出たこともない57%のお子さんが除去されていたという結果もあります。アレルギー検査のみで卵除去されていた方も非常に高い割合でいます。また、センターで6歳時の鶏卵負荷試験の結果を比べた調査では、鶏卵を少量でも食べていたほうが鶏卵アレルギーの改善がみられ、完全除去した場合は92%でアレルギーが継続していました。検査だけで除去せず、少しでも安全に摂取できるのであれば食べておいたほうが良いと思われます。 (つづく)

    (2021年10月31日 日本アレルギー友の会講演会より、採録 庄田)

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