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    第607号

    皮膚バリアから考える  アトピー性皮膚炎発症のしくみと対処法② 神戸大学大学院医学研究科・医学部内科系講座皮膚科学分野教授 久保 亮治先生

    皮膚がもつ二つのバリア:角質バリアとタイトジャンクションバリア 

    私たちのように陸上すなわち空気中で生活している脊椎動物では、皮膚の表面を覆う細胞層(表皮)のいちばん外側の細胞が角化し、角化した細胞が積み重なって角質という頑丈なバリアを作っています。角質のバリアによって、乾燥によるダメージから内側の細胞を守ると同時に、皮膚から水分がどんどんと逃げていってしまわないように守っているのです。 

    皮膚の表面を覆う角質のバリアの内側には、もう一つの大切なバリア、タイトジャンクションバリアとよばれるバリアがあります。タイトジャンクションとは何でしょうか。私たちの体の表面は細胞のシートで覆われています。細胞のシートで体の外と中を分ける時にいちばん問題になるのは、細胞と細胞のすき間を通って中から外にものが染み出してしまう、または外から中にものが入ってきたりすることです。すき間を通って漏れることを防ぐために、ジップロックのようにぴったりと細胞と細胞のすき間をシールする。それが、タイトジャンクションという構造です。

    角質バリアの作られ方 

    角質のバリアというのは、レンガが積み重なって、レンガのすき間をモルタルが埋めている、そのような構造をしています。皮膚の細胞の内側がケラチン線維でカチンカチンに固まり、細胞自体がレンガになります。そのレンガのすき間を、脂質というモルタルで埋めています。角質のすぐ下にあるSG1とよばれる細胞がケラチン線維でカチンカチンになり、レンガになる。その時、もう一つ内側にあるSG2の細胞がモルタル(脂質)を分泌して、レンガのまわりのすき間を埋めるのです。このようにして新しい角質のレンガが一つできると、その内側のSG2の細胞はSG1に、SG3の細胞はSG2に、それぞれ分化します。これが延々と繰り返されて、毎日新しい角質のレンガが内側から一つずつ作られ、また積み重なった角質の表面からは、古くなったレンガが一つずつアカとなってはがれ落ちていきます。

    角質を正常に保つタイトジャンクション 

    タイトジャンクションは、SG2細胞の細胞と細胞のすき間をシールして、体の外と中を分けています。すなわち、角質を作るレンガとなるSG1細胞は、タイトジャンクションバリアの外側でレンガになり、レンガの間を埋めるモルタル(脂質)はタイトジャンクションバリアの外側に分泌されるのです。いわば、体の外側で角質というよろいを組み立てているということができます。 

    レンガの間を埋める脂質の中には、抗菌ペプチドという、細菌を殺す特殊なペプチドが大量に入っており、角質でいろいろな菌が勝手に増殖しないようになっています。このペプチドが体の中に入ってくると、それだけで炎症を起こしてしまいますが、普段はタイトジャンクションバリアの外側にあるので、炎症を起こしません。 

    タイトジャンクションのバリアが壊れないことは非常に大切で、バリアが壊れるだけで炎症が起こってしまうことがわかっています。ところが、炎症があると、タイトジャンクションのバリアが弱くなってしまうのです。

    炎症→バリア障害の悪循環 

    タイトジャンクションのバリアが壊れていると、角質のバリアを正しく作ることができません。正しく働くタイトジャンクションバリアの外側には、良い角質バリアが作られます。しかし皮膚に炎症が広がると、タイトジャンクションバリアが弱まります。タイトジャンクションバリアが弱まった状態で作られる角質は、非常に弱い、壊れやすいものになります。炎症がずっと続いていると、良くない角質が積み重なって、さまざまな刺激に弱い、ボロボロの角質バリアになってしまうのです。 

    さらにわかってきたことは、この弱い角質バリアの下では、容易に新たな炎症が起きてしまうことです。炎症があるからタイトジャンクションバリアが弱まる、その結果、丈夫な角質バリアを作れない。そうすると外の世界からのいろいろな刺激が入りやすくなり、次の炎症が起こって、さらにバリアが弱まる。慢性の治りにくい皮膚炎ではこのように、いつまでたっても良いバリアが戻ってこない悪循環に陥ってしまっているのです。 (つづく)

    (2021年10月31日 日本アレルギー友の会講演会より、採録 大場康子)

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