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  • 症状の安定化を保つために

     私たちがアプリを用いて行った調査に、アドヒアランスといって、服薬が守られているかどうかということを質問する内容がありました。過去に吸入ステロイドを中断した経験のある方は6割いらっしゃいました。もちろん、この中には、管理が良くてやめられた方もいるかもしれません。症状が良くなると、治療をいったんやめてしまう可能性があるということです。
     ここが、症状の安定化を保つために非常に重要な点です。炎症が燃え盛り増悪してしまった時、咳も痰も止まらず息苦しいとなると、治療を一生懸命していただけます。しかし、症状がいったん治まると、残念ながら治療を中断されてしまう。症状がないような状況になっても、しっかり治療を継続していただくことで、症状がなく増悪が起きにくい安定した状況になってきます。
     症状がない状況であっても、実は炎症は存在しており、燃え盛る前の、くすぶっている状況といえます。そうしたところに、たとえばほこりだとか、ウイルス感染、冷たい空気、そういった薪がくべられると、また一気に燃え盛ってしまう。こういった増悪を抑制するためには、症状がない時期にも抗炎症治療を行う必要があります。しっかりとメンテナンスしていくと、燃え盛ることはなくなり、地ならしができていくことにつながります。これを我々に提供してくれたのが、吸入ステロイドです。吸入ステロイドが出るまでは、私たちは内服や点滴のステロイドを使ってきました。
     内服や点滴のステロイドは、全身の血中濃度を維持しなければ、治療効果を発揮できません。点滴して、すぐにおしっこで出てしまったら、症状はらくになりません。治療効果が上がらないわけです。全身を回って治療効果が上がる一方で、全身性の副作用が随伴してしまうことが問題でした。
     一方、吸入のステロイド薬は、吸って、効かせたい気管支に吸着して、そこに長くとどまるようにできています。その後、血液中にも入りますが、速やかに代謝されて、おしっこで出ていってしまいます。つまり、血中濃度が維持されないようにできています。このため、吸入ステロイドでは全身性の副作用が起きにくく、全身性の副作用を考えずにステロイドを長期にわたって使用できるようになりました。もちろん、薬が喉に大量についてしまいますので、喉についた薬をしっかりと洗い流さないと、喉に副作用が出てしまいます。
     吸入ステロイドの進歩により炎症をしっかり抑えられるようになってきたので、ぜんそくの症状管理状態が良くなってきているはずなのですが、現状はそこには至らない状況です。吸入ステロイドだけでは良くならない患者さんもいらっしゃるわけですが、増悪のない時期に吸入ステロイドを中断してしまうことによって管理状態が向上しない方がまだまだ多くいらっしゃるということです。

    吸入ステロイドのデバイス選択

     アプリの中で、どういったお薬を使っていますかという質問をしたところ、ドライパウダー製剤が8割、エアロゾル製剤が15%という状況でした。ドライパウダー製剤は1日1回吸入のものが多いこともあってか、日本ではドライパウダー製剤が好まれていることがわかります。
     エアロゾル製剤とドライパウダー製剤の大きな違いは、吸入の仕方に関わっています。ドライパウダー製剤は勢いよく、強く吸いこむ必要があります。エアロゾル製剤はゆっくり、深く吸いこむ必要がありますが、噴霧と吸入をうまく同調させる必要があります。あとは、エアロゾル製剤はちょっとアルコール臭があり、ドライパウダーのほうが声がかれやすいということがあります。いろいろな薬がありますので、ご自身に合ったものを探していくことが大事だと思います。
     エアロゾルの場合には、同調の難しさを克服するためにスペーサーという吸入補助具があります。これはご自身で購入いただく必要があります。筒の一端にエアロゾル製剤を差し込んで、筒の中に薬剤を噴霧し、舞っているエアロゾルを吸うというものです。口の中に薬剤が吸着することが少なくなり、また自分のペースでゆっくり、深く吸いこむことができるということで、非常に吸入効率が上がります。また、エアロゾル製剤では、ボンベを押す時に非常に力が要るということがあります。補助具を使うと、少ない力でしっかりと押すことができるようになります。
    (2023年5月28日 日本アレルギー友の会講演会より、採録 増谷)

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