質問1
(4歳男児)病院で処方されたプロペトとモイゼルト(PDE4阻害薬の外用剤)を混ぜたものを毎日塗り、ひどくなったら1週間アンテベートを塗るよう言われています。アンテベートを塗ると1週間できれいになりますが、アンテベートをやめ、プロペトとモイゼルトに戻して1週間経つと、火傷したように真っ赤になり、皮膚がむけるような状態です。プロテインとかプルーンとか食事療法など、ほかの治療法も加えたほうが良いか迷っています。乳酸菌など半年ほど飲んで、便通は良いですが、ほかに何かありますか。
天谷先生 これは、治療期に完全に治しきれていない状況だと思います。一度炎症すると、免疫細胞が前衛基地を皮膚で作るようになるので、免疫細胞が武装解除をするまできちっと治しきるのが重要です。
江藤先生もおっしゃいましたが、外用剤を1フィンガー・チップ・ユニットの量できちっと塗り、炎症を治しきることです。1週間めに炎症が少しでも残っていれば、2週間めもきちっと塗り、週単位で炎症を抑えきることが大事です。塗るのをやめた後の再発は、治しきれていないことをいちばんに考えます。
したがって、この状態で、たとえば食事療法やほかの療法を行うことはあまり勧めません。食事療法等々のエビデンスもどの程度かわかりません。まずは皮膚の炎症をきちっと治し、その後、完全に炎症が消えた状態になったら、炎症が消えた状態を長く保つことで、より再発しにくくなります。もう少し治療を継続して、きちっと炎症を抑えこむことがまずは大事だと思います。
江藤先生 天谷先生が理事長をされている日本皮膚科学会が発表しているアトピー性皮膚炎治療のガイドラインで強調している、「1フィンガー・チップ・ユニット」という塗り方が極めて重要です。寛解導入といって、ひどい状態から良い状態にしていく強力な治療のスタートに必須のノウハウです。
その次に重要でいちばん難しいのは、寛解維持です。寛解維持は、結局、ステロイドをやめないという形になってしまう。そうすると、一生ステロイドを塗るのではないか、副腎皮質ホルモンの分泌が変わってしまうのではないかなど、余計な心配をされますが、身体のホルモンバランスは、ゆっくりと変わりますが、そう簡単に変わるわけではありません。しかし、寛解維持のためにステロイドをやめないと言うと、患者さんは拒否します。そこで、プロアクティブ治療をお話しします。ステロイドをやめようとした時、皮膚が良く見えても、触れば少し厚ぼったいなど、炎症が微かでも残っていれば、必ず再燃します。それを完全に消しきるために、ほとんど良くなっても週1~3回薬を塗り続けるのです。
なお、4歳のお子さんだと、アンテベートはちょっと強すぎるかもしれません。もう少し弱めでも良いかもしれません。
天谷先生 主治医と相談して、皮膚の炎症程度に合うグレードのステロイドか、ほかの抗炎症剤を出していただくことが良いと思います。
江藤先生 寛解維持がプロペトだけでは無理なら、少し炎症を抑える効果があるモイゼルトは選択肢となります。
質問2
非ステロイドの新薬(モイゼルト、ジファミラスト、コレクチム等)の説明はよくありますが、プロトピックは最近話題に上がらず、説明もありません。プロトピックはあまり推奨されないのですか。
天谷先生 プロトピックの重要性は変わっていません。現在は、薬局も含めていろいろなところで、新薬の説明が多いと思います。プロトピックは炎症を抑える重要な薬です。皮疹の状態に応じてプロトピックをうまく使っていただければと思います。
江藤先生 4歳だと、プロトピック、コレクチム、モイゼルトのどれでも使えますね。プロトピックはこの三つの非ステロイドの中で最も強力です。ただし、刺激感がある分、使いづらいところがあるので、刺激感が強い場合はコレクチム、モイゼルトに変更していくという方針で、それがうまくいく場合は、コレクチムは生後6カ月から使えますから、6カ月から使える薬としてプロアクティブ治療に使っていくのが良いのではないでしょうか。
(2023年5月28日 日本アレルギー友の会講演会より、採録 平野)