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    第631号

    小児アレルギーのトピックス2023①

        東京慈恵会医科大学附属第三病院小児科教授 勝沼 俊雄先生

    アレルギーの発症予防について

     小児科医には、アレルギーの発症を抑えたい、予防したいという発想が常にあります。この発症予防について「アレルギーマーチ」に焦点をあてて考えてみると、いちばんの大元は湿疹であるため、湿疹の発症を抑えるとアレルギー全体を予防できるのではないかという発想につながります。つまりこれは経皮感作(皮膚を通してアレルギーを発症すること)を逆手に取った考え方といえます。
     2014年に、成育医療センターの大矢先生、慈恵・葛飾の堀向先生らによってアレルギー予防の重要な論文が報告されました。彼らは、アレルギー体質の妊婦から生まれた赤ちゃんを対象に、ランダム化比較試験という質の高い臨床研究を行いました。治療をする群には保湿剤(資生堂 ドゥーエ®)を毎日塗り、対照群には必要な時だけワセリンを塗る形式です。32週経過後、介入群ではアトピー性皮膚炎の発症を抑えられた結果が得られました。

    新生児からの保湿剤の外用は一概に勧められない

     しかしその後、類似の研究が次々と行われてきました。その中の代表的な研究をご紹介しましょう。それは1000人以上を対象にした英国の大規模臨床研究です。介入群は、スキンケアの指導に加え、保湿剤を1年間塗り続けました。対照群は指導のみを行いました。その結果、2歳の時点における湿疹の発症状況に治療群と対照群の差は認められませんでした。前段で述べた研究成果とは真逆の結果だったのです。
     同様の研究成果をほかに六つ、計八つの論文を私が検討したところ、保湿剤を塗ると「アトピー性皮膚炎を予防する」という結論が4編、「予防しない」という結論が4編であり、賛否が半々でした。
     現時点では、予防目的で新生児から保湿剤を塗ることは一概に勧められるものではないということが言えると思います。今日、ネットやSNSの情報に振り回される保護者が少なくないかもしれませんが、その必要はありません。

    保湿剤による養育者のQOLの向上

     私どもは化粧品会社と協力して、幼児のアトピー性皮膚炎患者を対象とした高保湿乳液とワセリンとのランダム化並行群間比較試験を行いました。研究に用いた保湿剤はグラファモイスチュアキープミルクMC®という商品で、これ自体しっとりしているので添加物をほぼ使用しなくてすむ特徴があります。
     アトピー性皮膚炎の診断基準を満たす1歳以上6歳未満のアトピー性皮膚炎児で、2週間以上の治療によって中等症以上の状態から軽症化した方を対象とし、8週間介入を行いました。その結果、アトピーの重症度を測るEASI(イージ)というスコアリングで、対照群では変化はなかったのですが、介入群では経過するにしたがって良くなり、保湿剤の違いで有意差があることが示されました。
     さらに、QPCADという、日本で開発された、乳幼児のアトピー性皮膚炎の養育者のQOLを測るスコアリングの調査結果から、この保湿剤使用群で有意に良くなったという結果が出ました。

    最新の小児アトピー性皮膚炎の治療

     ステロイドやタクロリムスしかない時代が長く続いていましたが、最近はJAK(ジャック)阻害薬、PDE4(ピーディーイーフォー)阻害薬、生物学的製剤といった分子標的治療薬による治療が可能になってきました。それぞれに長所と短所があり、湿疹の重症度やタイプによって使い分けています。医師も試行錯誤しながら用いているのが現状といえるでしょう。しかし、これらの分子標的治療によりアトピー性皮膚炎の治療は革新的に進歩しています。

    (2023年11月12日 日本アレルギー友の会講演会より、採録 庄田)

    講演内容の動画を配信していますので、メールでお申し込みください。

     

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