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    第632号

    咳ぜんそくと重いぜんそくの方に
    知っておいていただきたいこと ―診断の重要性―

    国立病院機構相模原病院 前臨床研究センター長・特任研究部長
    谷口 正実先生

    1)成人ぜんそくは増えている

     国内での成人ぜんそくの頻度は約7%と判明しており、20~30年前と比べ2~3倍に増えています。一方で小児ぜんそくは日本を含め先進国では徐々に減っています。

    2)咳ぜんそくは多くない、また重症化しない

     咳ぜんそくの定義は、喘鳴(ゼイゼイ、ヒューヒュー)や息苦しさが全くなく咳のみが主に就眠中に続き、気管支拡張薬がよく効くことです。気道炎症や気道過敏性は軽いため、海外では軽症ぜんそくの範疇に入れられています。咳が長引く場合に咳ぜんそくと診断される方が増えていますが、治療に抵抗する方のほとんどは咳ぜんそくではなく、数週間の場合は百日咳などの感染、数カ月~年単位の場合は心因(ストレス)、胃酸の食道逆流(GERD)、間質性肺炎、MAC症など感染が原因であることなどがほとんどです。私のセカンドオピニオン外来に相談に来られた100名以上の重症の咳ぜんそくと診断されていた方は、残念ながら咳ぜんそくではなく、ぜんそく以外の治療で良くなっています。ただし、喘鳴や肺機能低下がある真の重症ぜんそくの方では、咳や痰は残りやすく難治です。この場合は、咳優位ぜんそくとも呼ばれ、咳ぜんそくとは異なり、ステロイド内服や生物学的製剤が適応となります。

    3)真の重症(難治性)ぜんそくの背景は

     吸入ステロイドは全身の副作用がなく、ぜんそくの基本治療薬として毎日の継続が大切であるのはご存じの通りです。重症ぜんそくとは、これらの吸入薬をしっかり吸入し十分使用しても安定化せず、内服ステロイド薬を年に数回~連日必要とする患者さんを指します。その背景として挙げられるのは、鼻ポリープを伴う好酸球性副鼻腔炎が約4割(うち半数がアスピリン(解熱鎮痛薬)過敏)、アスペルギルス・フミガツスが関与する方が3~4割、気道感染が関与する方が2割、COPDや肥満が関与する方が1~2割、EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)の方が数%です(重複あり)。また、とくに75歳以上の方は合併症が多くなり、やや治療抵抗性です。
     最近では、室内のホコリに多いカビの一種であるアスペルギルスに対するIgEが陽性化し、症状が安定しない中高齢ぜんそくの方が非常に増えています。このカビは体温を好み気道炎症を強く起こすため、室内環境対策も重要です。

    4)成人ぜんそくの発症因子/難治化する因子は

     成人期でのぜんそくの発症因子は難治化因子とほぼ同じです。まず喫煙(受動喫煙含む)が重要な因子ですが、女性(中年以降は女性が男性の2倍発症しやすい)、肥満(BMI25程度の軽度肥満含む)、慢性気管支炎などの感染、胃酸を下げる薬の継続使用、過度のアレルゲン暴露などもぜんそく発症因子として知られています。さらに過労や睡眠不足、ストレス、運動不足(筋力低下)、ホルモンも関係があると考えられています。まず重要なのは喫煙と肥満の回避、感染対策ですが、これら以外にもご自身でできるだけ対応することが大切です。
    5)治りにくい症状は、実はぜんそく由来でないことも多い
     私のセカンドオピニオン外来に「重症ぜんそくが良くならない」と来られた患者さんの多くは“ぜんそくではない”、もしくは“ぜんそくは軽症で、ほかの原因でぜんそくのような症状が続いている”方がほとんどです。逆に真のぜんそく病態には吸入ステロイドや生物学的製剤はよく効きます。良くならない方はぜひ、ぜんそくの客観的な指標である肺機能、気道炎症(血液検査での好酸球数、肺機能検査での吐く息における一酸化窒素濃度)測定を受けていただき、それらが高い値を示しているかどうかをご確認ください。これらが正常値の場合は、咳や息切れの原因がストレスやGERDのことが多くあります。また慢性感染や間質性肺炎なども咳や息切れが続きますが、レントゲンでは確認できないことも多く、中高齢の方は一度は肺のCT検査をお受けになって、ぜんそく以外の所見がないかを確認してもらってください。
     今回は重症ぜんそくの方々へ、まず知っておいていただきたい点を述べました。紙面の都合で生物学的製剤に関しては触れることができませんでしたが、使用できる5種類いずれもぜんそく病態にはよく効きます(ぜんそく症状がほぼなくなり内服ステロイドも中止できる)。しかし、ほかの病態が隠れていると効果は不十分です。ぜんそく症状が良くならない場合は、主治医はもちろん、地元の専門医や厚労省が推進するアレルギー拠点病院(各都道府県あたり数施設あり、自治体HP参照。国の拠点病院は相模原病院と成育医療研究センター)にセカンドオピニオンなどで相談されるのも良いかと思います。必ず良くなる方法がありますので、諦めずに行動を起こされることをお勧めいたします。

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