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  • 2 0 2 4

    第633号

    小児アレルギーのトピックス2023③

    東京慈恵会医科大学附属第三病院小児科教授 勝沼 俊雄先生

    食物アレルギー対応の現状

     食物アレルギー対応の原則は、①必要最小限の除去、②安全性の確保、③栄養バランス、④QOLです。学校で差別感を抱いてしまう除去対応のお子さんもたくさんいます。
     十数年前より、原因抗原(卵アレルギーなら卵、牛乳アレルギーなら牛乳)を少量から摂取していく「経口免疫療法」という方法が試されるようになってきました。しかし、これは現在でも研究の一環であり、一般医療としては推奨されていません。研究段階なのです。そこにご注意いただきたいと思います。
     私たちの研究でも、重症な牛乳アレルギーを対象にした牛乳の経口免疫療法で明らかな有効性を認めました。しかし、無視できない副作用も認められたのです。1人あたり1年につき平均で1回、アナフィラキシーショックを発症しました。こういったリスクがあるため、いまだに標準治療にはなっていないというわけです。安全性を高めるために、さまざまな研究が進められています。

    治す試みとしての、安全な免疫療法を求めて

     たとえば、タンパク質の構成分子をペプチドというレベルまで細かくして、副作用を軽減する試みが進んでいます。タンパク質がアレルギーの副作用を起こすには一定の分子の大きさが必要なので、小さな分子で、かつ、好ましい免疫の変化を起こす作用をもつものを模索しています。
     あるいは、アレルギーを起こすIgEという抗体をブロックする生物学的製剤の注射を継続しながら、牛乳や卵などの抗原摂取を進めていく方法も検討されています。
     皮膚に抗原を貼ることで免疫を誘導できないか、という治療方法も試されています。
     私たちは、舌の下に卵の抗原を落とす舌下免疫療法の有効性と安全性を検討しています。「ランダム化比較試験」という臨床研究を実施しています。

    まとめ

    ⃝保湿剤のエビデンスが出てきました。やはり、保湿は基本中の基本です。
    ⃝ぜんそくの治療は進化していますが、悪化因子対策、吸入手技の確認、こういうベースが非常に大事です。
    ⃝アトピー性皮膚炎治療、これもまた大きく進化しています。保湿、スキンケア、外用療法の継続、こういった基本もぜんそく同様、大事です。
    ⃝食物アレルギーと免疫療法。安全な免疫療法の開発に、自分自身、期待して頑張りたいと思いますし、ぜひご期待いただきたいと思います。

    アレルギー疾患療養指導士(CAI)の普及を目指す

     いくら良い薬が開発されても、正しく用いなければ効果は現れません。また、注射を嫌がる子どもに生物学的製剤を無理に用いることはできません。このような背景から、「アレルギー疾患療養指導士」という資格を作りました。2023年までに、3年間で1,050人あまりを輩出しています。
     看護師、薬剤師、管理栄養士といった有資格者が患者と医者との間に入り、両者の橋渡しをします。アレルギー患者さんにとって、心強い味方になってくれるはずです。アレルギー友の会のみなさまにおかれましても、ぜひご支援いただければ幸いです。
    (2023年11月12日 日本アレルギー友の会講演会より、採録 庄田)

    講師・常任顧問の先生方と当会スタッフ

     

    講演内容の動画を配信していますので、メールでお申し込みください。

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