アレルギー患者にとってのCAIとは
CAIは、アレルギー疾患療養指導士を意味します。Clinical Allergy Instructorの頭文字を取ってCAIと呼んでいます。アトピー性皮膚炎やぜんそくなどアレルギー疾患の治療や管理に関する専門知識を有し、患者や家族への指導スキルを兼ね備えたコメディカルスタッフです。必ずしもアレルギーが専門ではない医師、あるいはアレルギー専門医と協同してチーム診療を行うことにより、標準的で良質なアレルギー医療を全国の患者さんに提供する資格です。
アレルギー疾患は、単に薬を処方するだけではなかなか良くなりません。患者さんが正しく薬を使用して、初めて薬の効果が現れます。つまり患者さんが正しい塗布方法、吸入方法、噴霧方法、点眼方法などを身につけないと、薬の効果は発揮されないのです。食物アレルギーでは、正しい知識を身につけていなければ栄養失調やアナフィラキシーの危険にさらされることになります。
日本人の半数が悩んでいるとされるアレルギー疾患について、誰でもどこでも良質なアレルギー医療を受けることのできるしくみと資格がCAIです。
なぜできたの
私は約40年の臨床経験から、多くのアレルギー疾患は、標準的な治療や指導を十分に行えば必ず良くなると考えています。とくに近年は薬が充実してきたため、その意をいっそう強くしています。
一方で、多くの方が悩まされているアレルギーに対して、アレルギー専門医の地域偏在、アレルギー診療の地域格差が問題となっています。日本アレルギー学会は長年にわたり、アレルギー専門医の拡充を図り、アレルギー診療の向上に努めてきましたが、アレルギー疾患がいまだに国民生活に多大な影響を及ぼしているのが現実といえます。日本アレルギー友の会の存在理由もそこにあるのではないでしょうか。
アレルギー診療の均てん化(誰でもどこでも良質なアレルギー医療を受けられること)を実現するためには、アレルギー専門医の育成だけでは不十分です。長年、アレルギー学会専門医制度委員会に携わってきた私は、そう痛感していました。そこで、アレルギー疾患の専門知識と指導スキルを兼ね備えたコメディカルスタッフであるCAIを育成し、アレルギー医療の均てん化を実現化しようという発想に至ったのです。
2014年にアレルギー疾患対策基本法が施行されました。同法はアレルギー医療均てん化を重要視し、「国は、アレルギー疾患に関する学会と連携協力し、アレルギー疾患医療に携わる専門的な知識および技能を有する医師、薬剤師、看護師その他の医療従事者の育成を図るために必要な施策を講ずる」ことが謳われています。コメディカルに関するこの記述はまさにCAIを意味していると思います。
誰がなれるの
看護師(准看護師含む)、薬剤師、管理栄養士です。
近くの病院やクリニックには、いるの
CAIのホームページには「CAIマップ」というページがあります(https://caiweb.jp/caimap/)。お近くのCAIが検索可能です。
患者・家族にとってのメリットは
CAIは医師によるアレルギー診療を補完し、患者や家族に寄り添い、支えてくれます。アレルギー専門医は全国に4,000人あまりしかおりません。また前述の通り、地域による偏在も解決していませんし、残念ながらすべてのアレルギー疾患に精通する専門医は限定的です。アレルギー拠点病院の中には、アレルギー専門医が在籍しない施設もあります。つまりアレルギーに悩む患者さんは、アレルギーが専門ではない医師を受診する確率のほうがはるかに高いのです。
CAIはこのような現状においてアレルギー医療を補い、支える資格です。アレルギー専門医の下ではアレルギー診療の効率化、充実化を期待できますし、アレルギーが専門ではない医師の下でも、ガイドラインに沿ったていねいなアレルギー診療を期待できます。
CAIと医師によるチーム医療によって、全国のアレルギー患者さんが、標準的で安心なアレルギー医療を受けられるようになると信じています。CAIの拡充に向けてご理解とご支援を賜ることができれば幸いに存じます。