記事ごとに探す

キーワード

検索する期間

月 から

月 まで

カテゴリ一覧

  • 講演会
  • 編集室
  • 相談窓口から
  • 勉強会・患者交流会
  • 体験記(気管支喘息)
  • 体験記(アトピー性皮膚炎)
  • ニュース(友の会関連)
  • ニュース(一般)
  • その他
  • イベント告知
  • イベントレポート
  • アレルギー専門病院めぐり
  • 2 0 2 0

    第580号

    ゲノム情報を活用したアレルギー疾患の病態の解明①

    東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター 分子遺伝学研究部教授 玉利 真由美先生

    ゲノムとは何か

     ゲノムとは、生命の設計図といわれており、人々の体質に大きく関わるものである。

     我々は父親から1本、母親から1本の染色体を受け継いでこの世に生まれてくるが、性格や身体的特徴が両親のどちらかに似たりするのは、こういった遺伝暗号が関与しているといわれている。

     医療の世界では、病気のかかりやすさ、重症化のしやすさ、薬の効果や副作用の出方などに体質が関わっているといわれている。ゲノムの配列は99.9%一致しているが、一部分だけ違う配列があり、そういったものがゲノム多様性(遺伝子多型)といわれている。

     これら多様性が、遺伝子の発現に影響し、人によって炎症を起こしやすい、あるいは感染しやすい、がんになりやすいなどといったことが生じると考えられている。

     そのため今現在、世界中でヒトゲノムの多型情報に基づく疾患や医療の研究が盛んに行われている。

     遺伝子多型が具体的にどういったものに関わるのか、例を挙げて説明する。遺伝子の多型、つまり配列の個体差が、アルコールを分解する酵素にある場合を考える。日本人の場合、アルコールをコップ1杯飲むと、100人中だいたい半分は顔色一つ変わらず、40人くらいが真っ赤になり、10人くらいが気持ち悪くて青くなるといった反応が出るといわれる。

     これらの差は、両親から受け継いだ、アルコールを代謝する遺伝子の配列の違い(多型)が影響していると考えられている。

     ここで非常に重要なのは、アルコールを飲まない限り、この遺伝子多型の差は表面に出てこないということである。環境要因が、遺伝子の多型が顕在化するのにとても重要な要素であるといえる。

     同様に、糖尿病は日本人の3分の1がかかりやすいといわれており、ご飯を食べた後にインスリンが素早く十分に分泌されず、ゆっくり、少なめの体質の人が糖尿病になるといわれているが、江戸時代のお粥だけの生活であれば誰も糖尿病にならないものが、現代のように食事が豊かになったことで、このような体質の人が糖尿病になると考えられている。

     糖尿病に関しては、日本人でKCNQ1という遺伝子が非常に重要だと、2008年に、国際的な雑誌に理化学研究所から報告されている。

    体質研究の創薬への活用

     体質研究は、創薬に非常に重要だといわれている。大手製薬会社、アストラゼネカから、創薬の標的分子にヒトの遺伝的なエビデンスがあるかないかで、開発の成功率が全く異なると報告されている。

     同様にグラクソ・スミスクラインという製薬会社のデータでも、最初の研究から承認に至るまで、同様にゲノム情報の証拠が多いほど、承認につながると報告されている。そのため近年、世界中の大手製薬会社がヒト疾患のゲノム解析を進めている。

     具体例を挙げると、高コレステロール血症という、若い年齢から心筋梗塞や、皮膚や腱の黄色腫などが生じてくる、家族性で遺伝要因の強い病気がある。その原因遺伝子で3番目に多いPCSK9という遺伝子があり、ゲノム解析の結果、一般集団でも一部の悪玉コレステロールが高い人は、この遺伝子の多型性、多様性が関わるといわれている。

     若年発症の心筋梗塞の患者ばかりを集めてゲノム解析をやると、このPCSK9の多型が非常に強く関係していたこともわかっている。

     このような背景もあり、製薬会社はモノクロナール抗体*を作る技術により、PCSK9阻害薬を開発からたった10年ほどで臨床に出すことができ、しかも非常に高い効果が得られることがわかっている。

     このようにゲノム情報などを精密医療に生かしていく動きが世界中で起きている。具体的には、Precision Medicineという、患者をきちんと層別化して最も適切な医療を提供しようというプロジェクトである。

     米国では、このPrecision Medicineのプロジェクトが何本も走っており、その一つにAll of Usというプロジェクトがある。予算規模は10年間で1500億円といわれており、基本になるのは100万人のゲノム情報である。先述したアルコールの具体例なども踏まえ、環境データも一緒に収集して、最適な医療に役立てようというプロジェクトである。

    (2019年10月27日 日本アレルギー友の会講演会より、リポート 福田拓也)

    *モノクロナール抗体:1種類の免疫細胞が作る抗体をコピーしたもので、たとえばがん細胞だけを攻撃できる抗体のこと。抗体医薬品として効果が期待できる。

    会員の方にこの講演の資料をお送りいたします。
    事務所まで電話、FAX、メールにてお申し込みください。
    また、講演内容の動画も配信していますので、メールでお申し込みください。

    第580号の他の記事

    ボランティア募集

    あなたの“少しの時間”を友の会に!~みなさんの力を必要としています~

    火・土曜日のご都合の良い日、時間にスタッフとして活躍してみませんか。 ①事務所内での庶務作業  事務所で会費納  | 続きを読む |