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    第581号

    ゲノム情報を活用したアレルギー疾患の病態の解明②

    東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター 分子遺伝学研究部教授 玉利 真由美先生

    遺伝要因の探索

     病気の体質について調べる時には、対象の病気ではなかった人や病気にかからなかった人も含め、多くの人のゲノムのDNAを対象に、先述のゲノムの多様性のある部分(遺伝子多型)について、その数を数えていくが、全く病気に関係ない遺伝子多型は数が同じになるのに対し、疾患に関わるものは、病気でない人と比べて偏りが出てくる。

     この作業をゲノム全体に行うのが、ゲノムワイド関連解析、GWASといわれているもので、現在、世界中のゲノムプロジェクトで行われる手法である。

     ヒトのゲノム配列は2003年に解読されたが、この方法(GWAS)は、約100万個を対象に調べ、病気にかかった人とかからなかった人で、偏っている部分の近くに存在する重要な遺伝子や、遺伝子の働きに関わる配列を探すもので、Precision Medicine(精密医療)には欠かせない手法となっている。

     GWASは2005年頃に始まって以降、多くのデータが出揃ってきており、最近ではいろいろなことがわかってきた。

     まず一つめは、人種に特異的な遺伝要因があるということである。そのため日本における研究は非常に重要となってくる。また病気に特有の遺伝子も見つかってきている。さらに予想もつかなかった病気同士が実は根本でつながっていることもわかってきた。たとえば、がんの疾患で使われている、安全性の確立した薬剤を、別の病気の治療に役立てるといったことが期待されている。

     疾患に関わる遺伝子多型の機能を調べると、多くは遺伝子の発現量に影響して病態に関与することが判明し、これをエピジェネティクスと呼ぶ。

    日本人の成人気管支ぜんそくのゲノム解析の結果

     多くの患者や医師の協力のもと、日本人の成人気管支ぜんそくのゲノムワイド関連解析(GWAS)が行われた。その結果、それらの関連領域はアレルギーを引き起こす免疫細胞で、非常に大事な転写因子のエピゲノム1、調節領域にあること、そしてTSLP2も関連領域の近傍に存在することが明らかとなった。

     研究室では、TSLPの気道上皮細胞における発現について、ぜんそく治療薬がどのような影響を及ぼすかということを調べた。先述したように、ゲノムを解析するとかなりの確率で、その領域に治療のターゲットの分子が存在する。ウイルスの疑似物質をかけると、TSLPが非常に多く出るが、グルココルチコイド(吸入ステロイドの成分)をかけると半分になり、長時間作用型気管支拡張剤も同時にかけると、8分の1くらいになることがわかった。このことからもTSLPはぜんそく治療の標的分子の一つであろうと推測された。

     

    段状の会場で聴く多くの来場者

    アトピー性皮膚炎のゲノム解析の結果

     同様に日本人の多くの患者、そして診察している医師の協力のもと、アトピー性皮膚炎のGWASが行われ、遺伝要因がわかってきた。アトピーの治療は、バリア保持、つまり皮膚に穴をあけないことと、炎症を適切に抑えることに尽きるが、体質として、バリアが重要な遺伝子、そして炎症反応また炎症を抑えるような免疫機構、かゆみの遺伝子やビタミンDの代謝の遺伝子などが候補遺伝子として同定できた。

     2015年の総説に好酸球性の気道炎症メカニズムが示されている。大気汚染等により、環境と人体の境界にある上皮細胞が傷害された場合、傷んだ上皮細胞の情報は、IL-13やTSLPなどを介して、内部の免疫応答の細胞に伝わるが、ゲノム解析の結果得られた領域には、この伝達に関わる遺伝子が多く含まれていた。

     気管支ぜんそくの世界中の14万人のGWAS結果を統合したものをみると、上皮バリア障害やウイルス感染に重要な遺伝子がたくさん含まれていることがわかる。

     人それぞれによって体質的な強さ弱さの組み合わせが違ってくるため、それに合わせて適切な治療が行われるよう、研究が進められている。

    (2019年10月27日 日本アレルギー友の会講演会より、リポート 福田拓也)

    1 遺伝には、先天的なものだけでなく、行動・習慣・経験など生きている間に変化する情報もあり、後者の遺伝情報をエピゲノムと呼ぶ。

    2 花粉症やぜんそくなどのアレルギー疾患で中心的な役割を果たしているTh2細胞を誘導する重要な分子のこと。

    会員の方にこの講演の資料をお送りいたします。
    事務所まで電話、FAX、メールにてお申し込みください。
    また、講演内容の動画も配信していますので、メールでお申し込みください。

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