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    第582号

    ゲノム情報を活用したアレルギー疾患の病態の解明③

    東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター 分子遺伝学研究部教授 玉利 真由美先生

     風邪の原因ウイルスの多くはライノウイルスといわれており、100種類以上のタイプがある。33℃で増殖しやすく、寝冷えしやすい梅雨や秋から冬にかけての時期には、気管支が冷えて非常に風邪をひきやすくなると考えられている。

     デンマークの研究グループが、ぜんそくの急性増悪で入院が必要であった子どものDNAを集め、GWAS(ゲノムワイド関連解析)を行った結果、CDHR3という候補遺伝子を発見した。当初はその機能がわからなかったものの、翌年、風邪ウイルスであるライノウイルスの受容体だということがわかった。リスクアレルをもつ人は、ウイルスとの結合が増強し、細胞内でライノウイルスCが非常に増殖しやすいことも判明した。

     昨年出た論文によれば、ぜんそく患者の通常の診療時にヒトの上鼻咽頭吸引サンプルでライノウイルスを調べたところ、前述のCDHR3のリスクアレルをもつ人は、全く発作がない時にもライノウイルスが証明されやすいということもわかった。

     このライノウイルス受容体は治療のターゲットとして、現在薬の開発が進んでいる。

    ゲノムデータの健康医療への活用

     現在、世界最大規模のイギリスのバイオバンクが、ゲノムデータを健康医療に活用しようというプロジェクトを進めている。

     全ゲノム、ヒトの30億の塩基対を読む費用は、現在10万円ほどになっている。遺伝子多型はさらに安価で数万円で読むことが可能である。最近では実際にタイピングされていない遺伝子多型を高精度に予測することも可能になり、1人1回遺伝情報をとっておけば、後から健康情報をそのデータに結びつけてさまざまな解析ができる状態になっている。

     また、ウエアラブルデバイスで心拍数や呼吸数なども、情報として加えられてきており、未病のうちに病気にならないようにしたり、早期発見したりすることに役立てようと研究が進んでいる。

     ある論文によれば、実際に全ゲノムのデータからある病気になりやすいかを予測し、リスクの高い人が一般集団でどのくらいの割合で見つかるかという研究が行われている。現時点で治療法がない病気に関しては難しい側面があるが、検診などで早期発見をして、生活習慣を変えることで疾患を予防できるようなものに関しては、遺伝リスクを知ることにどのような効果があるかという実証実験のようなものが、フィンランドやエストニアでは進んできている。

     かなりの精度で病気が予測できるようになってきたが、この予測に用いるデータは白人のデータが大部分を占めており、日本人の予測の精度は白人よりも低いといわれている。

     ヨーロッパで報告された予測方法を活用すると、日本人では予測の精度がだいたい6割から7割の間ということになっているが、アフリカに至っては、さらに低い割合であり、健康格差が悪化するのではないかという可能性も指摘されている。そのため、日本人をはじめとする非欧米集団のゲノム解析は今後、重要である。

    治療から予防への医療のシフト

     これまでの内容を総括すると、ゲノム解析をもとにした遺伝予測リスクスコアの現実社会への応用が現実味を帯びてきている。これによって、症状がひどくなり診断がしっかりつくようになってから治療するという時代から、前もってリスクを知り、早め早めに発見して、重症化しないようにするという先制医療が実現できないかということが研究されている。

     また、非常に多くの疾患のゲノム解析の結果が蓄積されてきており、複数のアレルギー疾患で共通のゲノム領域に存在する候補分子は治療標的分子とされ、現在、それらに対する生物製剤が開発されてきている。こういった生物製剤は、今のところは対象となる疾患が一つなど、適応が限られている場合もあるが、ゲノムのエビデンスをもとに、複数の疾患で治療の恩恵にあずかれる人が増えていくのではないかと期待されている。

     さらに、がんの領域などにおいて、エピジェネティクスをターゲットにした治療薬が開発され、治験が次々に行われている。それらの安全性が確立されていけば、アレルギーで重要ながんと共通なエピジェネティクスの変化があればその薬剤を使ってコントロールし、増悪の予防、一定時期に活用するなど、そういった対策も今後盛んに行われていくのではないかと期待されている。

    (2019年10月27日 日本アレルギー友の会講演会より、リポート 福田拓也)

    会員の方にこの講演の資料をお送りいたします。
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