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    第582号

    50年にわたるぜんそく闘病記(1)

    東京都 S.I(54歳)

    (3)ステロイド吸入薬の登場~海外旅行も楽しめるように~

     運動するとすぐに苦しくなり、体育の成績はいつも「1」。頑張れることは勉強しかありませんでした。高校生になると、発作は多少落ち着いてきましたが、それでもまだ入院もあり、呼吸器科病棟に移りました。

     英語が好きだったので、短大に進み、大手町の商社に就職。その前後の頃だったか、ステロイドの吸入薬が登場し、この恩恵により、発作の回数がぐんと減り、救急で病院にかかることはなくなり、普通の人の生活に近づきました。社会人スキークラブに入り、スキーにのめり込みました。今まで運動ができなかった反動です。海外旅行も楽しめるようになり、泰子ちゃんの分まで満喫しました。今振り返ると、この頃がいちばん元気で楽しんでいたと思います。

     一児の母になり、行政での相談業務の資格を取得し、仕事との両立に超多忙な日々を過ごしていました。ぜんそくはさらに回復し、五反田への通院は4カ月に1回程度。低用量のステロイド吸入を続けてはいましたが、経過は良好、ぜんそくであることを忘れかけていました。

    (4)再び闇の中へ~見えない病との戦い~

     40歳を過ぎた頃から、風邪でも発作でもないのに、痰がゴロゴロからみ、頻繁に咳が出るようになりました。それでもぜんそくの息苦しさがないので、年齢のせいにしていました。先生からは、ステロイド吸入薬を増やすことを提案されました。息苦しくないので抵抗がありましたが、結局徐々に高容量のステロイド吸入をするようになりました。それでも状態は悪化しました。いつも喘鳴がするので、受診時にぜんそく発作ととらえられ、その場で点滴となったこともありました。息苦しさが全くないので、私自身は何かが違うと、疑問が拭えませんでした。

     その後も、原因不明の発熱や肺炎を繰り返し、状態は悪化の一途でした。気付けば体重は10㎏も減り、体形は骨と皮でした。CTでは肺全体に炎症が広がっていましたが、原因不明のため、治療法はなく、成す術がありませんでした。

     不安でいっぱいだった時、長年お世話になった先生から突然の退職を告げられました。不安以外の何物でもありませんでした。自宅により近いアレルギー専門の病院を紹介され、転院となりました。そこでは「非結核性抗酸菌症」の疑いを指摘され、初めて聞く病名に、さらに不安が募りました。痰の検査をいくら繰り返しても原因の特定には至らず、そのうちに、ぜんそく発作も出るようになり、あっという間に過去の自分に戻りました。やせた身体に原因不明の症状、混沌とした日々が続きました。

     悪化したぜんそくの治療のため、抗IgE抗体(ゾレア)の注射を受けることになり、1年ほど続けました。ぜんそくは驚くほど改善したものの、咳と痰は悪化するばかり。行き詰まり、絶望感にかられていた折、思いがけず一筋の光が差し込みました。アレルギー友の会との出会いです。緊張して受話器をとり、勇気を出して悩みを打ち明けました。友の会のスタッフの方々は私の状況を親身に受け止めてくださいました。話の通じるスタッフの方々にどれほど救われたことか。そして、経験豊富な今の担当医との出会いにつながりました。あらゆる方面から病状を検証し、さまざまな検査を受けました。詳細は書ききれませんが、先生のご経験や見識の深さに、前向きな気持ちが芽生えてきました。先生の紹介で、肺専門の病院での外科的肺生検を受けました。結果は破壊性びまん性気管支炎との診断でした。原因ははっきりわかりませんが、自分の免疫が自分の肺を攻撃して壊していくらしいのです。疾患名はなく、現時点では治療法も確立されていないそうですが、検査を受けた病院でもスペシャリストの先生に診ていただき、ステロイドの点滴による治療を数回受けました。

    (5)再起した今~10年ぶりに回復~

     それから数カ月、10年ぶりに元気な日常が戻ってきました。薬の効果は半年から1年程度だそうですが、久しぶりに咳と痰のない毎日を過ごしています。担当医からのアドバイスで、ウオーキングやストレッチを日課にし、食事は玄米食、身体を冷やさないよう心掛けています。今、身体の変化を実感しています。現在はICS/LAMA/LABAの3成分配合のテリルジーという新薬の吸入を使い、ぜんそくのほうもまずまずコントロールできています。

     重篤なぜんそくを経験した自分はほかの病気にはならないだろうという根拠のない過信がありました。10年前、日頃と違う症状だと感じた時点でもっと早く積極的に担当医に相談していれば良かったと振り返っています。

     これからの自分がどうなっていくのか、不安は続きます。それでも「今日も1日無事息ができた」そう思えた日は安堵します。「息をすること」は子どもの頃から私にとって特別なことなのです。

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