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    第585号

    新薬紹介 コレクチム軟膏(一般名:デルゴシチニブ)

    アトピー性皮膚炎治療外用薬では世界初の成分

     アトピー性皮膚炎の治療にはステロイド外用薬、タクロリムス軟膏が使われてきましたが、本年6月24日に、世界初のアトピー性皮膚炎への外用JAK阻害薬である「コレクチム軟膏」が発売されました。どのような薬なのかを、当会顧問であり、NTT東日本関東病院皮膚科部長の五十嵐敦之先生にお聞きしました。

    どのような特徴がある薬なのでしょうか。(作用機序等)

     コレクチム軟膏はヤヌスキナーゼ(JAK)阻害作用をもつ新しい塗り薬で、今まで使われていたステロイド外用薬や免疫抑制外用薬とは異なる作用機序でアトピー性皮膚炎の症状を和らげてくれます。アトピー性皮膚炎では、サイトカイン(IL-4、IL-13、IL-31など)と呼ばれる物質が免疫細胞や神経に作用すると、JAKなどのシグナル経路が活性化され、炎症やかゆみを引き起こします。コレクチム軟膏は皮膚から吸収されると、細胞内のJAK経路から伝達される炎症を起こすシグナルをブロックし、皮膚の炎症やかゆみを抑え、アトピー性皮膚炎の症状を改善します。ステロイドのような皮膚萎縮、毛細血管拡張などの副作用がなく、またタクロリムスによくみられる灼熱感などの刺激作用が少ないのも特徴です。

    どのような皮膚症状に効果があるのでしょうか。

     アトピー性皮膚炎の皮膚症状全般に効果があります。赤みやブツブツ、苔癬化と呼ばれる皮膚の厚みを改善し、かゆみも抑えてくれるので、皮膚をひっかかないですむようになります。

    どのように使うものなのでしょうか。(塗る量・期間・塗り方)

     通常成人は1日2回、適量を患部に塗布します。1回あたりの塗布量は5gまでとされています。投与期間についてはとくに定められていませんが、症状が改善した場合には継続投与の必要性について検討し、漫然と長期にわたって使用しないこととなっていますので、主治医と相談して決めていくのが良いでしょう。なお、お子さんへの使用はまだ認められていません。

    塗り始めてからどれくらいの期間で効果が出るのでしょうか。

     試験データをみると開始2日後には患部のかゆみが改善していますので、塗り始めてから速やかに効果の発現が期待されます。一方、治療開始から4週間以内に皮疹の改善が認められない場合は、使用を中止することとなっています。

    効果はどれくらい持続するのでしょうか。

     効果の持続時間については明らかなデータはありませんが、既存薬と大きな差はないと思います。

    塗るのをやめるとすぐに再発したり、使用前より悪化したりすることはありますか。

     既存の外用薬と同様、十分な期間外用を続けずに中断してしまうと、症状が再燃してしまいます。自己判断で使用を中止せず、主治医の指示に従ってください。

    ステロイド外用薬、タクロリムス軟膏とはどのように使い分けるのでしょうか。

     同じ部位に同時に使用することは通常不要で、部位によって使い分けます。たとえば、体にステロイド外用薬を使用し、ステロイド外用薬の副作用が気になる顔面にはコレクチム軟膏を使用する、といった具合です。タクロリムス軟膏との併用は臨床試験では禁止されていたためデータがありません。これらを併用すると免疫抑制作用が強く現れる可能性があり、また両剤を併用する意義は明らかでないので、これらの併用については慎重に判断することが望まれます。

    使用上の注意点はどのようなことがありますか。

     皮膚感染症の部位や粘膜、びらん、潰瘍面への使用は避け、万一目に入った場合は、直ちに水で洗い流すなどの注意が必要です。

    副作用はどのようなことがありますか。

     ほかの塗り薬と同様、毛包炎やヘルペスなどの感染症やにきびに注意が必要です。接触皮膚炎も少数報告されています。

    費用はどれくらいかかりますか。

     薬価は1gあたり139.70円で、ジェネリックのあるタクロリムス軟膏(約50円台~100円台)やステロイド外用薬(約10円台~20円台)に比べると高価です。

     

    五十嵐敦之先生

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