年齢による傾向と発症の素因
アトピー性皮膚炎は「自然に寛解する」といわれてきましたが、皮膚中のIL-13の発現をみると年齢分布は二峰性で、乳幼児期に多く、成人期に再発・新規発症の山がみられるのが特徴です。
IL-13はかゆみや皮膚の肥厚を引き起こすサイトカインです。乳幼児期(0~5歳)は成人と相似のパターンで、この時期は大人と同じ病態をもっているといえます。小児(6~11歳)になると自然寛解が増える傾向がありますが、従来の「治療せずに自然寛解を待つ」ではなく、乳児期から積極的に治療して良好な皮膚状態を保つことが大切です。
アトピー素因には、(1)家族歴、既往歴(気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎、結膜炎、アトピー)と、(2)IgE抗体を産生しやすい、などがあります。
家族歴は発症に強く寄与すると考えられており、両親のどちらかにアトピー性皮膚炎の既往歴があると1.5倍、両親のどちらかがアトピー性皮膚炎の場合は3倍、両親ともにアトピー性皮膚炎だと5倍発症リスクが高まるとされています。そのため、家族歴を踏まえ、乳幼児期からしっかり治療(保湿・外用治療)をすることが、病気の期間を短くし、症状を軽くして、アレルギーマーチへの進展を抑えることになります。
全身療法の開始可能年齢
全身療法の年齢適応も拡大しています。乳幼児では、デュピルマブが6カ月から、バリシチニブ(JAK阻害薬)は2歳から、小児では、かゆみ特化のネモリズマブ(ミチーガ)が6歳から、そして、12歳以上になると選択できる薬剤が増えます。
思春期は自我の確立に伴い、注射への抵抗など治療継続の障壁が生じやすい時期になるため、思春期に入る前、できれば12歳前後までに「塗るとらくになる」という成功体験を積み重ねておくことが、主体的に治療を選択していく力になります。必要に応じて一度全身療法を導入して“良い皮膚状態を知る”ことは、その後の自己管理を促すことにつながります。
また、アレルギーマーチへ進展しないよう、小児は早期に適切な治療を開始し、自然寛解につなげることが成人発症の予防になります。入院したら学校に行けないこと、日常生活を健やかに送れないこと、学習の妨げになることなどが危惧されるため、早期に湿疹をコントロールし、自然寛解を目指すことが重要になります。
客観的な指標と主観的な指標を併用
治療選択に関して、医師は「どのくらいかゆいか」や「夜眠れているか」などを聞かないと患者の状態はわかりません。一方、患者側は「皮膚はきれいだがかゆい」「カサカサが気になる」など医師と感じ方が異なることが多いので、客観的な指標が必要となります。
客観的な指標:視診による重症度はEASIで表します。部位別(顔・体幹・上肢・下肢)に、紅斑・浮腫(むくみ)・掻破・苔癬化を評価し、数値化します。血液検査では、血清IgE、血清TARC、血清LDH(とくにLDHは現在、臨床経過との相関が高いとされる)を用います。ただし抗体製剤などの新規薬では、これらが指標になりにくい面もあり、今後の指標開発が課題です。
主観的な指標:POEM質問票などを用い、ドライスキン(触るとザラザラ・カサカサなど)を含めて点数化することで、医師の判断と患者の感覚のズレを埋めることができます。
治療方針を考える時は、病期(急性期・増悪期・慢性期)をふまえ、客観的な指標と主観的な指標を併用し、治療選択と治療効果の判定を行うことが重要です。
新しい治療により、きれいな皮膚状態を維持できる時代になりました。治療のゴールは「きれいになる」だけでなく「きれいを保つ」へ。寛解を維持する出口戦略という治療の段階に入ったと考えます。
そして、局所療法(薬の強さ、量、塗り方、回数、期間)と全身療法(免疫療法、注射、内服)の選択肢も増えました。今後は自分の治療の考え方を主治医に伝えて、治療方針を決めてほしいと思います。
参考:慈恵会医科大学のアトピー性皮膚炎外来は月曜~木曜に専門枠を設けて診療しています。受診やご紹介については、随時ご相談を承っています。
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(2025年6月8日 日本アレルギー友の会講演会より、採録 小平)










