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    第603号

    気管支喘息治療の最前線:新しい配合剤や抗体製剤を中心に①

    帝京大学ちば総合医療センター第三内科(呼吸器)教授 山口 正雄先生

     ぜんそく症状は、気管支が炎症を起こして敏感で、過敏性が亢進しているところに、風邪、天候不順、タバコの煙、疲労、そして、ダニ、ほこり、ペットなどのアレルゲンによるさまざまな刺激が加わり、気管支の平滑筋が攣縮して狭窄を起こす状態です。その後、気管支が元の広さに戻ってもなお、炎症は残っているということが重要です。ぜんそくの薬は進歩していますが、実態はちょっとしたことで症状が出る方が多数います。

     軽い方でも気道粘膜の生検をすると、基底膜の下の構造が肥厚、そして気道上皮の一部が欠落・剥離、炎症細胞である好酸球が増加、といった変化がみられます。重い方だとこれが顕著に悪化します。このような変化は症状が軽い方でも常にあることを、まず頭に置いておきたいと思います。

     ぜんそくで亡くなる方は、2000年頃までは国内で年間6,000人もいましたが、2018~2020年のぜんそく死は4分の1ほどまで減りました。

    ◆ぜんそくの診断

     ぜんそくの診断は、「喘息予防・管理ガイドライン2021」を参考に臨床診断します。発作性の呼吸困難、喘鳴、胸苦しさ、咳の反復、夜間や早朝に起こりやすいというのが一般的な症状ですが、必ずしもはっきりせず咳だけの方もいます。

     検査については呼気一酸化窒素(NO)濃度測定がかなり普及しています。数値が37を超えると、ぜんそくの可能性が高いと診察時に伝えることができます。

    ◆ぜんそくの治療

     治療の基本はやはり吸入ステロイド(ICS)です。軽症のステップ1から重症のステップ4、いずれにしてもICSを使います。これは最も重要な長期管理薬で、内服と比べ格段に量が少なく全身的副作用がほとんどありません。口の中の荒れが起こり得ますが、うがいでかなり予防できます。嗄声も起こり得ますが、全くこの薬を使えないという方は非常に少ないと言えます。

     ICSは、直接には気管支を拡張しませんが、毎日の治療薬として使います。気道の腫れや狭窄のもとになる炎症を抑える作用があるためです。一方、即効性を期待して発作症状を抑えるためには、β2刺激薬(SABA)を使います。

    ◆吸入薬の上手な吸い方

     吸入薬のお話をする前に、「ホー吸入」についてお話しします。藤田医科大学の堀口先生、近藤先生が発見した知見がもとになって、動画が作られました(https://youtu.be/ZAXEoel2F3E)。患者さんに、「この動画は見ておくといいよ」と言うと、高齢の方でも興味をもち、多くのみなさんが活用しています。

     舌がだらんと上がっている状態が普通の吸入の姿ですが、内視鏡で調べると喉がなかなか見えにくく、狭い口の中を薬が通っていく間にベタベタ周囲にくっつきながら、少量だけが奥にやっと届きます。舌を下げて下あごにくっつけ、口腔を広くした状態で吸入すると口の中の残量が減り、薬が奥の気管支に届きます。さらに、口をちょっと上に向けたほうが良いです。薬が奥に届いて効果も上がるので、口の中の副作用でお困りの方はぜひ実践していただければと思います。

    ◆吸入薬の種類

     吸入製剤の話に入ります。従来から使われている薬が今でも基本ですが、そのほかにもいろいろな新薬が出てきています。ICSと長時間作用性β2刺激薬(LABA)の2剤配合の長時間作用型配合剤は現在主流であり、「アドエア」「シムビコート」「レルベア」「フルティフォーム」といった吸入薬が広く使われていますが、「アテキュラ」という薬が加わり、昨秋(2021年秋)から長期処方可能になりました。これには低用量・中用量・高用量の3種類のカプセルがあります。カプセルを器具に仕込んで両端から穴を開けてから吸入するという、ぜんそく薬では初めての方式です。

     これに追加して使われる吸入薬に、抗コリン薬(LAMA、長時間作用型ムスカリンアンタゴニスト)があります。治療ステップ2~4、とくにぜんそくが重い方ではかなり普及している薬剤です。LAMAの中で「スピリーバ」が最初にぜんそく適応となり、ほかの吸入薬と併用されています。そして、ステップ3と4では、ICSとLABA、さらにLAMAの三つを合わせた吸入薬が出てきています。

    (つづく)

    (2021年6月6日 日本アレルギー友の会講演会より、採録 庄田)

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