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    第603号

    小児食物アレルギーの予防と治療の最前線③

    国立成育医療研究センターアレルギーセンター長 大矢 幸弘先生

    <h2>経口免疫療法について</h2>
    <p> 食物アレルギーの治療では、食物アレルゲンを食べなければ何も起こらないということから、基本は除去を行います。しかし、除去だけではなかなか治らない場合もあり、自然に治るのを待つことが難しそうな人に関しては、食べさせて治すという方針になっています。</p>
    <p> たとえば、1g食べた時は何でもない場合で、10g食べるとだめだという人は、1gまで食べて良いということになり、そういった症状を起こさない安全な量を摂取することを部分解除といいます。</p>
    <p> ポイントは、安全な一定量の摂取でも、閾値が上がっていくということです。つまり、一定量を食べているだけでも、閾値は徐々に上昇してくるため、急速に治療を進める必要はありません。</p>
    <p> また、風邪などによる不調、過度な運動などによって、閾値というものは毎日変動することがわかっています。負荷試験の時は大丈夫だったのに、家に帰って子どもが暴れたらアナフィラキシーを起こしたといった場合に対応するために、少々閾値が下がっても大丈夫な程度の安全な量を行う方法を開発しており、そういった場合でも徐々に閾値が上がってくることもわかっています。したがって、経口免疫療法に関しては、とにかく安全に、地道にやっていくことが良いと思います。</p>
    <h2>経口免疫療法の効果</h2>
    <p> 経口免疫療法の効果には個人差があり、急速に閾値が上がる子どももいれば、徐々にしか上がらない子どももいます。年齢が早い時に始めた人のほうがより早く治る傾向はありますが、とにかく焦らないことが重要です。経口免疫療法に対して、心理的な障壁を作ってしまうほうが治しにくくなるため、子どもが楽しんで食べられるようなものを続けるのがいいと思います。</p>
    <p> 気をつけていても、万が一アナフィラキシーを起こした時は、必ずエピペンを使用してください。2本携帯して、いつでも使えるように練習しておいてください。</p>
    <h2>経口免疫寛容の誘導</h2>
    <p> 抗原が皮膚から入ってくると、経皮感作を受けてIgE抗体が作られるのですが、食べていることで経口免疫寛容が誘導されて、食物アレルギーにならないという仮説(二重抗原曝露仮説)もあります。</p>
    <p> 言いかえると、炎症のあるところからアレルゲンが入ってくるとIgE抗体ができてしまいますが、炎症がない時に食べた場合、経口免疫寛容が誘導されるということです。</p>
    <p> 子どもであれば湿疹があったり、気道の炎症があったりする時は、そこから入ってきます。大人で気道の炎症があってぜんそくをちゃんと治療していないとか、鼻炎がある人の場合はそのようなところからアレルゲンが入るリスクもあります。経口のルートでも、下痢をして腸炎を起こしている時はだめですが、腸炎とかを起こしていない、炎症がない時に食べたものは、経口免疫寛容が誘導されるということです。</p>
    <p> また、ピーナッツも、乳児期から食べていたほうがピーナッツアレルギーになりにくいということが、イギリスのデータで出ています。これで世界中のガイドラインが変わりました。</p>
    <p> 卵もそうです。我々の研究で、卵を生後6カ月に1日50mgから始め、生後9カ月から250mgに上げていくという、すごく微量で開始する臨床研究をを行いましたが、誰もアナフィラキシーを起こしていません。また、生後6カ月から卵を食べた子どもは、1歳まで除去した子どもに比べて、80%以上も卵アレルギーが少なかったという結果も出ています。</p>
    <p> 近年、牛乳に関しても、卵と類似の結果が出ています。最初の3日間は、人工乳を与えないほうが牛乳アレルギーが少なかったのですが、生後1カ月から人工乳をとっていた子どものほうが、生後6カ月まで人工乳をとらなかった人よりも、生後6カ月の時に牛乳アレルギーが少ないという結果が出ています。</p>
    <p> また、離乳食に関しては、種類が多いほうが、ぜんそくも食物アレルギーも減るという調査研究があります。</p>
    <p> したがって、予防のヒントは、離乳食の開始を遅らせないこと、なるべく多様な種類の離乳食を食べさせ、経口免疫寛容を誘導することと、湿疹ができたら、速やかに徹底治療するということです。</p>
    <p>(2021年6月6日 日本アレルギー友の会講演会より、採録 小野耕平)</p>

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