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    第641号

    ぜんそくとの上手な付き合い方③

    千葉大学大学院医学研究院アレルギー・臨床免疫学教授 中島 裕史先生

    自分のぜんそくの増悪原因を知る

     ぜんそく治療・管理の目標は、症状を適切にコントロールし、将来的なリスクを避けることです。とくに、炎症を抑えることで正常な呼吸機能を維持することが重要です。これにより、ぜんそくによる死亡や急性増悪を防ぎ、長期的な呼吸機能の低下を避けることができます。治療薬の副作用を抑えることも重要で、最終的には、健康な人と同等な生活ができることがぜんそく治療の目標です。
     急性増悪の予防には、自分のぜんそくがどのような状況で悪化しやすいかを把握する必要があります。ぜんそくが悪化する要因は人それぞれ異なりますので、自分の悪化要因を知り、それを避けることが悪化予防のために非常に重要です。

    発作が起こらないように定期的に長期管理薬を使うことが重要

     発作が起きた場合は、まず発作を止める治療を行います。一般的に、短時間作用型のβ2刺激薬を使用して、収縮した気道を広げます。ぜんそく治療では、急性発作が起こらないようにすることが大切です。そのためには抗炎症作用のある長期管理薬を定期的に使用し、ぜんそくの状態を改善させることが重要で、その基本となるのは吸入ステロイド薬です。
     ぜんそくの治療は患者さんの重症度に応じて行います。軽症の患者さんであれば、低用量の吸入ステロイド薬だけでコントロールできることも多いです。コントロールできなければ、吸入ステロイド薬を増量します。それに加え、長時間作用型のβ2刺激薬や抗コリン薬などの吸入薬を追加し、症状や気道炎症がない状況を維持することを目指します。
     重症な患者さんには、高用量の吸入ステロイド薬や複数の気管支拡張薬を使用します。それでもコントロールが難しい場合には、生物学的製剤を使用することもあります。経口ステロイド薬は副作用があるため、できるだけ短期間での使用にとどめます。長期的に経口ステロイド薬が必要な場合には、コスト面の問題はありますが、生物学的製剤の使用も検討します。

    吸入ステロイドはリモデリングを抑制し気道過敏性を改善する

     吸入ステロイド薬は、気道の炎症を抑えてリモデリングを防ぎ、気道の過敏性を改善します。吸入ステロイド薬は一般に副作用が少なく、口腔カンジダ症や嗄声といった軽度の副作用が見られることはありますが、うがいなどの対策をとれば、ほぼ副作用なく使用できます。
     一方、経口ステロイド薬には、骨粗しょう症、糖尿病、易感染性、皮膚萎縮といったさまざまな副作用が生じるリスクがあり、少量でも長期間の服用で副作用が現れるため、できるだけ避けることが重要です。
     近年、複数の生物学的製剤がぜんそく治療に使用できるようになり、経口ステロイド薬の使用を減らすことが可能になりました。IgEの受容体への結合を抑えるゾレア、好酸球の分化と活性化に関与するIL-5の作用を抑えるヌーカラやファセンラ、アトピー性皮膚炎にも使われるデュピクセントなどが使用可能です。最近では、気道上皮細胞が分泌するサイトカインTSLPに対するテゼスパイアも使用できるようになりました。それぞれ効果が期待できますが、どの薬がどの患者さんに最も適しているかについては、まだ完全には解明されていません。
     ぜんそくと上手に付き合うためには、まず正確な診断と、原因となるアレルゲンの回避が重要です。その上で、抗炎症作用のある長期管理薬を適切に使用し、症状がない状態を維持することで、将来のリスクを防ぐことが大切です。

    (2024年5月26日 日本アレルギー友の会講演会より、採録 増谷)

    講演内容の動画を配信していますので、メールでお申し込みください。

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