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    第612号

    アトピーはきっと良くなる①

    近畿大学医学部皮膚科教室主任教授 大塚 篤司先生


    アトピー性皮膚炎のメカニズムと病態について

     アトピー性皮膚炎のメカニズムや病態について聞くよりも、治し方を教えてほしいとおっしゃるかもしれませんが、病気を知っておくことは心の安定につながります。自分の体の中で何が起きているかがわかると、悪化した時に、これがいけなかったとか、これはしょうがないと思えるので気がらくになります。そのため、解決策の前に、病気について知っておいていただくことが非常に大事ではないかと思っています。
     アトピー性皮膚炎の語源は、ギリシャ語で「奇妙な」という意味です。当時は病気の本体は全くわかっていませんでしたが、ここ10年から20年で劇的にわかってきています。
     左右対称にブツブツが出て、発疹が出てきます。そして「かゆい」というのが大原則になります。
     アトピー素因がある方はなりやすいというのがアトピー性皮膚炎です。この素因は、ぜんそくとか鼻炎、結膜炎です。ご両親、もしくはお父さん、お母さんのどちらかにアトピー性皮膚炎があることがアトピー素因となっています。


    アトピー性皮膚炎の原因

     今、研究が進み、アトピー性皮膚炎はこれが原因ではないかとか、こういったところが悪さをしているのではないか、ということがわかってきています。
     一つが乾燥肌です。ドライスキンとよばれるものです。皮膚のバリアを構成している、フィラグリンとよばれるタンパク質があります。これが減ってくると乾燥肌になり、アトピーになっていくことが2000年代前半にわかりました。
     フィラグリン遺伝子異常があるかないかは、手のひらの拇指球の部分に深い皺があるかないか、ここが見分け方になります。100%正しいというわけではありませんが、乾燥肌、アトピーになりやすいかどうか、一つの見分け方のポイントになるかと思います。アトピーに昔から関わられている方はセラミドもご承知かと思いますが、フィラグリンのほうが遺伝子異常があるといわれています。
     二つめはかゆみです。かゆみのメカニズムがわかってくると、対象となる遺伝子がわかり、それに対する薬が開発できます。メカニズムがわかることが非常に大事です。
     三つめは免疫の異常です。Th2とよばれるサイトカイン、これが悪玉です。Th2サイトカインが増加することが、アトピー性皮膚炎の悪さをしている原因になります。
     この三つが絡み合って、悪循環を引き起こします。乾燥肌があればかゆいですし、かゆくてひっかけばTh2サイトカインが上がり、バリアが悪くなります。どれもが悪循環を作っているのがアトピー性皮膚炎です。


    皮膚からの間違った侵入 「経皮感作」

     バリアが悪いと何がだめかというと、バリアがしっかりしていると外からの異物、敵が入ってこられません。しかしアトピー性皮膚炎のカサカサ肌の場合、外から簡単に敵が入ってきます。敵が入ってきてしまうと、皮膚にはたくさんの免疫細胞がありますので、それがアレルゲンと認識して、アトピー性皮膚炎の発症に影響してしまうというメカニズムがあります。人の体において、正しく入っていくことは何も問題ありませんが、不正に侵入すると敵として狙われてしまうシステムになっています。
     正しく入るというのは、「口から入る」ことです。栄養源である食物は口の中から入るのが基本になります。それが栄養となって、口から入るものは基本的に危なくないので受け入れられます。これは「経口免疫寛容」という言葉で説明されます。
     一方、間違った侵入は皮膚からです。もともと皮膚にはバリアがあって、皮膚からモノが入ってくることは想定されていません。皮膚から入ってくる悪者(寄生虫など)を排除しようというシステムが体にはあります。「経皮感作」とよばれるもので、皮膚から入ってくるものは危ないととらえてしまいます。これが「二重抗原暴露仮説」(注:簡単に説明すると荒れた皮膚から抗原が入り込めばアレルギーを発症し、抗原を口から食べるとアレルギーを予防するという考え方)といわれています。
    (2022年5月22日 日本アレルギー友の会講演会より、採録 石崎奈都美)

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