記事ごとに探す

キーワード

検索する期間

月 から

月 まで

カテゴリ一覧

  • 講演会
  • 編集室
  • 相談窓口から
  • 新薬紹介
  • 寄稿
  • 勉強会・患者交流会
  • 体験記(食物アレルギー)
  • 体験記(気管支喘息)
  • 体験記(アトピー性皮膚炎)
  • ニュース(友の会関連)
  • ニュース(一般)
  • その他
  • イベント告知
  • イベントレポート
  • アレルギー専門病院めぐり
  • 600号特別記念号
  • 2 0 0 2

    第612号

    食物アレルギー児が直面する社会での孤立 

    愛知県 M.K(42歳)

    幼稚園・保育園への壁

     今年4歳になる息子は、離乳食開始時から小麦、卵、大麦に重度のアレルギーがあることがわかり、3歳になるまで醤油をはじめ完全除去生活をしていました。そんな私たちが実際に直面した体験をお話しさせていただきたいと思います。
     当時、主治医の判断により、アレルゲンに触れることも負荷試験を実施することもできなかったため、集団生活間近にもかかわらず、息子の許容範囲すら私は知らずにいました。併せて、コロナ禍で同世代の子と遊ぶ機会すら無く育ててしまっていたため、理想は「お友達と目一杯遊ぶ環境をあげたい」反面「先々、負荷試験ができて、少しでも症状が良くなるまで集団生活を諦めたほうが良いのか?」と葛藤の日々でした。主治医に相談するも、症状があまりに重いため、方針は変わらず。いよいよ幼稚園探しの時期がきました。
     わが家は、悩んだ末に、保育園ではなく息子と離れる時間が短い幼稚園を希望しました。おやつがない分、食べる回数が少ないことが理由です。ですが、この選択が壁にぶつかる原因になりました。
     覚悟は当然していましたが、住んでいる区内の幼稚園は「入園拒否」はもちろん、問い合わせの際は前向きに話してくださるものの、実際に園に伺うと、ほかの子とアレルゲンを間違えられていたことも。また、「皆が給食の中、机を離して1人でお弁当を食べることになります」と言われるなど、私は途中から問い合わせをすることすら怖くなりました。
     そんな中、保健所に相談に行きましたが現実は厳しかった。第一に幼稚園は個人企業だから、自治体は関与できないということ。保育園はママをサポートするのが目的で全く別物であること。幼稚園を望むのであれば、入園も入園後も自力のみということ。知らないことがたくさんでした。
     不思議と泣きながら帰ったことを覚えています。それでも「息子を守れるのはママだ!」と気持ちを切り替え、送り迎えを覚悟で市内全域に範囲を拡大し、がむしゃらに幼稚園を探しました。おかげで「7大アレルゲン対応給食」を提供し、アレルギー対応に力を入れてくださっている熱心な素晴らしい幼稚園に出会い、息子も面接を頑張った結果、無事入園!今は安心して登園しています。

     

    経験から望むこと

     入園が決まった後、さまざまな園の話を思い出し、「預かる側の限界」を知ったことで、「医療連携型の幼稚園(保育園)」があったらと思うようになりました。院内に幼稚園等を設ける、あるいは大きな病院の協力の下、現地ですぐに処置ができ、かつスキンケア等の管理もでき、かかりつけさえも兼ねる。そんな幼稚園があったらと。小さな子ほど症状が重い。エピペンを持てない。コロナで救急車がすぐに来られない、ママがすぐに駆けつけられない。そういったことが多分にあるからこそ、1分1秒を争う事態に、社会整備の必要を感じました。
     危機を体感した私は、とにかく子どもたちを守ってほしい一心から、わらにもすがる思いで、面識すらないある方に、お手紙をさせていただきました。地元愛知県出身の国会議員の先生です。祈るような思いで出したお手紙に奇跡が起き、先生からお話の機会をいただくことができました。ママとしての思いに熱心に耳を傾けてくださるだけでなく、市内の現状を自ら確認把握してくださった行動力と、先生の市民に対する熱い姿勢にとても感銘を受けました。同時に、未来が明るくなる希望を感じました。

    最後に

     遠回りは多々ありましたが、手を差し伸べてくださる方々がいて出会えたこと、それが今幼稚園との折衝に役立っていることは紛れもない事実です。これからも、真摯に息子のアレルギーと向き合っていきたいと思っています。

    第612号の他の記事