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    第628号

    喘息症状のない生活を目指して③

    順天堂大学医学部内科学教室呼吸器内科学講座准教授 原田 紀宏先生

    抗コリン薬の作用

     薬剤吸入が適切にできており、さらに、環境整備や合併症の管理も適切にされている状況にもかかわらず、ぜんそくの症状管理がうまくいかない場合には、治療を強化していくことを考えます。吸入ステロイド(ICS)を使っても管理が不十分な場合には、β2刺激薬(LABA)や抗コリン薬(LAMA)の吸入、ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放剤などの薬を十分に使ってぜんそくを管理していただきたいのですが、これらの薬剤の使用頻度が非常に低いことが指摘されています。とくに抗コリン薬の吸入に関しては、コロナ禍以前のデータではありますが、私どもの研究で4.4%、山口県のデータで5.5%ということで、使用頻度が低いことがわかります。
     抗コリン薬は、気管支を広げる効果にとどまらず、息切れや咳、痰を良くします。気管支に痰詰まりを起こしていることを粘液栓と表現しますが、粘液栓をスコア化すると、健常な方に比べて、ぜんそくの患者さんは非常に粘液栓が多いことが指摘されています。粘液栓を放置しておくと、残念ながら呼吸機能が悪くなってしまうというデータもあり、なるべく痰をしっかりと治療することも大事だということが示されています。
     咳と痰のぜんそくにおけるメカニズムを考えると、炎症を本態として、気管支の収縮と分泌物が産生されることで咳と痰になると考えられます。本態の炎症に対しては、吸入ステロイドを使用します。気管支拡張薬であるβ2刺激薬と抗コリン薬は、気管支を広げることができます。そして、抗コリン薬で分泌物を抑制することができます。これら3剤によって、ぜんそくにおける症状を良くできないかということです。さらに、この三つの吸入薬、吸入ステロイド、β2刺激薬と抗コリン薬は、お互いに作用し合って、より効果を出すことが知られています。このような背景もあり、今では3剤配合剤を使用することができるようになっています。

    生物学的製剤について

     抗コリン薬やそのほかの治療薬をしっかりと使っていただいてもうまくいかない時には、今、日本では、五つの生物学的製剤が使える状況にあります。抗IgE抗体のゾレア、抗IL―5抗体のヌーカラ、IL―5受容体抗体のファセンラ、IL―4受容体抗体のデュピクセント、そして昨年11月に出た抗TSLP抗体のテゼスパイアという薬です。これらの薬は、これまでさまざまに治療を行っても症状が遷延してご苦労されていた患者さんに、症状のない状態になるチャンスをもたらすものです。
     生物学的製剤による治療を長期に行っているとどうなるかということについてお話しします。5年間ゾレアを使って、その後、そのままゾレアを使う方と、偽薬に切り替えた方を1年間フォローした研究があります。ゾレアを使っていたほうが良かったという結果ではありますが、ぜんそくの増悪を起こすまでの時間を見ると、偽薬であっても、1年間、6割の方が増悪を認めませんでした。また別の研究では、6年間ゾレアを使った後に中止し、4年間追跡しています。6割の方は増悪を経験せずに維持していました。ゾレアのような生物学的製剤を使うことによって症状が良くなった患者さんでは、生物学的製剤使用以前にはさまざまな治療を行っても症状が沈静化しなかったにもかかわらず、生物学的製剤によってぜんそくの炎症、症状をしっかりと沈静化させることができています。そしてそれをやめても、1年間あるいは4年間、増悪を起こさずに維持できる方がいらっしゃいます。ぜんそくで起きている炎症をしっかりとメンテナンスして状態を維持することがいかに大事かということです。
     コントロール良好とは、症状がないことを目標にしています。薬をやめることが目標ではなく、症状がない状態を長く維持していただくことが重要です。症状がない状態を長く維持できれば、場合によっては3~6カ月以上持続すれば、薬を少しずつ減らしていくことを考えることができるようになってきます。ただ、薬を減らすことが目的ではありません。症状がない生活を目指して、それを維持することを考えていただけたらと思います。

    (2023年5月28日 日本アレルギー友の会講演会より、採録 増谷)

    講演内容の動画を配信していますので、メールでお申し込みください。

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