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    第629号

    アトピー性皮膚炎のかゆみを解き明かす

    佐賀大学医学部分子生命科学講座 出原 賢治先生

    1 かゆみの研究に至った経緯

     私は、1994年にアメリカでの留学から帰国した後、一貫してアレルギーについて研究を行ってきました。アレルギーがどうして起こるのかを分子レベルで解き明かし、それを元にアレルギーに対する新しい治療薬や診断薬を開発したいと思って研究に取り組んできました。そうした研究を進めていく中で、ペリオスチンというタンパク質の重要性が徐々に明らかになってきました。アトピー性皮膚炎のみならず、ぜんそく、好酸球性副鼻腔炎、アレルギー性結膜炎など、病気が起こる場所を超えて多くのアレルギーの発症に重要な役割を果たしており、また、血液や喀痰、涙液などで、患者さんの病態をよく反映してペリオスチンの値が上がっていることが明らかとなってきました。 一方で、アトピー性皮膚炎においてかゆみは患者さんにとって最大の悩みであり、その解決は最も重要な課題であります。しかし、かゆみが起こるしくみがわかってきたのは比較的最近のことですし、脳機能を介する感覚のため、なかなか実験で確認しにくいテーマでした。そうしたところ、幸運なことに、富山大学で偶然作製された遺伝子改変マウス(後にFADSマウスと名付けました)が生後まもなく自発的に強いかゆみを示すことを、作製者である北島勲先生より伺い、そのマウスを使って共同研究を始めました。
     同じ頃、国内の製薬メーカーから、自社で開発した化合物(CP4715という名称が付いていました)がペリオスチンに対する阻害剤になるかもしれないとの連絡をいただき、同様に共同研究を始めました。

    2 最新の基礎研究と新薬開発

     まず、生まれつきペリオスチン遺伝子をもっていないFADSマウスを作ってみたところ、かゆみを示さなくなりました。そうであれば、FADSマウスにおいてペリオスチンの作用を抑えれば、かゆみを制御できるかもしれないと考えて、FADSマウスにCP4715を投与すると、期待通りかゆみを抑えることができました。以上の結果から、ペリオスチンがアトピー性皮膚炎におけるかゆみの一因であり、CP4715がかゆみに対する治療薬となりうることを、昨年1月に発表しました。そうしたところ、予想を超える大きな反響をいただき、ぜひともこれを新薬開発に結びつけたいと考えるようになりました。
     しかし、大学発で新薬の開発を進めることは容易ではありません。費用の面から言っても莫大な額が必要とされます。そうしたことから、クラウドファンディングで研究費の支援をお願いすることを考え、昨年9月から11月にかけて公開しました。その結果、千人近い方から目標額の2倍の2千万円を超えるご支援をいただきました。日本アレルギー友の会の多くの会員の方からもご支援をいただき、心より感謝致しております。このようなご支援を元に、現在アトピー性皮膚炎のかゆみに対する新薬開発に取り組んでおります。

    3 アトピー性皮膚炎患者のかゆみからの解放

     ここ数年の間に、アトピー性皮膚炎に対する新薬が次々と発売されています。それぞれ素晴らしい薬剤ですが、すべての患者さんに対して有効なわけではなく、まだまだ新しい治療薬の開発が望まれています。私たちが開発を目指している新薬をはじめとして多くの治療薬が開発され、それぞれの患者さんに合った治療薬を選択できるようになれば、患者さんにとって大きな福音となるでしょう。私たちが開発を目指している新薬は、ペリオスチンが結合する受容体であるインテグリンを標的としています。インテグリンを標的としたアトピー性皮膚炎の治療薬はまだ無く、もし開発できれば従来の治療薬とは異なる特徴を示し、従来の治療薬が無効だった患者さんにも有効となるのではないかと期待しています。

    4 まとめ

     新薬の開発は、長い期間と莫大な開発費を必要とする事業です。しかし、アトピー性皮膚炎のかゆみに対する新薬を開発することは、多くの患者さんが期待されていることだと思います。また、日本初、大学発の新薬を開発することは、わが国における科学の発展に寄与することにもなると考えられます。まだ緒についたばかりで今後さまざまな困難が待ち受けているかと思いますが、果敢に新薬開発を目指していきたいと考えております。どうぞ今後とも日本アレルギー友の会の会員の方々からご支援を賜れますようご支援のほどをお願い申しあげます。

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