ぜんそくをコントロールする
ぜんそくは発作を起こすことにより、気道の上皮がはがれ、気道の平滑筋が収縮し、気道の中に分泌物が増えて気道が狭窄します。正しい治療をしていれば、可逆性なので正常な状態に戻りますが、自己判断で投薬を中止したりすると、気道の炎症が続き、元の状態に戻らなくなります。これはリモデリングという状態で、いろいろな薬を投与しても治りが悪く、重症化します。
患者さんに「体調はどうですか」と聞くと、「大丈夫です」と答える人が多数います。しかし、呼気中一酸化窒素を測る検査を実施し、この値を一緒に確認することで、自身の過小評価を防ぐことができます。
また、高齢の方は吸入薬を押す力や吸う力が弱く、吸入したことを忘れてしまうこともあります。ぜんそくの治療がうまくいかない時は、私たち医師だけでなく、看護師や薬剤師、皆で吸入指導を実施しています。
ぜんそくをコントロールするには、治療を続けることが大切なのです。
ぜんそくの増悪因子
アスピリンぜんそくはほとんど成人患者で、とくに30~40代の女性に多く、鼻炎、鼻茸がある方が多いです。アスピリンや他の鎮痛薬を服用後、鼻水、くしゃみが続いて、だんだんと苦しくなります。さらに悪化し病院に行かなくてはいけなくなることが多いのですが、ひどくなると呼吸が止まってしまう危険もあります。
また、β2刺激薬で気管支を拡張させますが、点眼薬に気管を収縮させるβブロッカーが入っていることがあります。ぜんそくが良くならないと思っていたら、病院で処方された点眼薬が原因だったということがありますのでご注意ください。
多賀谷先生の講演会場
生活の中にあるさまざまな要因
衣替えの時にタンスへ防腐剤を入れるご家庭もあると思います。パラベンが含まれていて、そのにおいで反応することがあります。また、食べ物を要因とする口腔アレルギーは、何か食べた時に口の中がヒリヒリします。アセチルサルチル酸という鎮痛剤と同じような作用の物質が食品中に含まれていることがあるからです。
お掃除インタベーション(介入)
小児のアトピー性ぜんそく患者のいる家庭に、1年間、ハウスダストやダニ対策として掃除をするようにインタベーションを実施しました。とくに寝室やマットです。ダニは私たちの頭皮から出るフケなどを食べて育ちます。さらに、ダニが好む生育条件は、暖かくて湿度がある場所、つまり私たちの居住空間です。お掃除インタベーションの結果、学校を休む、夜間のぜんそく発作という症状が改善されました。指導を中止した1年後も、お掃除インタベーションを受けた患者はぜんそく症状のある日数が減りました。ダニが入らない布団や、ダニをブロックするぬいぐるみを使用する、また、カーペットよりもフローリングのほうが、掃除をしやすいといわれています。
さまざまなアレルゲン
ペットアレルギーは、犬よりも猫に抗原性があります。犬の毛は比較的重く、床などに落ちやすいため掃除もしやすいのです。猫の毛は細くて舞うので、いろいろなところに毛がつきます。どうしてもペットを諦められない人は、よく洗ってあげましょう。犬は2日に1回、猫はお風呂を嫌がりますが、なるべく実施します。また、寝室にはペットを入れないようにします。お風呂場のカビも増悪因子の一つです。最近は、お風呂場に乾燥機がついているものもあるようですが、湿度を低くしてカビの発生しにくい環境にします。
ぜんそく急性期
急性期のぜんそく発作の治療にはステロイドを使用します。ただし、アスピリンぜんそく患者にステロイドを点滴すると悪化する場合があります。これは通常発作止めに使用するステロイド薬のソル・コーテフやサクシゾンなどに、防腐剤が含まれているからです。このような患者を診察する時、デカドロンやリンデロンなどの薬を投与します。抗ロイコトリエン薬、キプレスやモンテルカスト、シングレアなどはアスピリンぜんそくにも効きます。
(2019年6月2日 日本アレルギー友の会講演会より、採録冨澤美穂)
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