ぜんそくと合併症
ぜんそく自体を悪化させる合併症の中に、鼻炎や蓄膿症、COPD(慢性閉塞性肺疾患)があります。ぜんそくでは、気流閉塞は可逆性なので元の状態に戻りますが、COPDは肺がダメージを受けるため元の状態に戻りません。その二つが合併すると症状が悪化するのです。65歳以上のぜんそくでは、4人に1人はぜんそくと慢性閉塞性肺疾患を合併していると報告されています。ただし、適切にぜんそくをコントロールしておけば、普通の人と同じくらいの生活ができるのです。
ぜんそくと肥満
肥満の人ほど、ぜんそくが重症になります。最近の体重計でも簡単に測定できるBMI値は、体重÷身長÷身長で算出します。通常25以上で肥満と定義されています。なぜ肥満だとぜんそくが悪くなるのかは、まだ研究段階です。
気道の過敏性で、肥満の人はちょっとしたことでぜんそくを起こしやすくなります。また、身体活動性が低下すると呼吸機能が落ちていきます。レプチン、アディポネクチンというのは脂肪細胞から分泌されるホルモンです。レプチンは摂食ホルモンといって、それ以上ご飯を食べすぎちゃだめですと教えてくれるホルモンです。脂肪細胞が増えると、そのホルモンもたくさん出ますが、抵抗性が体内にできてしまいます。
アディポネクチンも脂肪細胞からできています。やせホルモンと言われていますが、なぜか脂肪細胞が増えてもこちらの働きは減少していく傾向にあります。
肥満になると、いろいろな病気を併発します。とくに睡眠時無呼吸になると、ぜんそくも気流閉塞が出てきます。こういう患者さんはダイエットをすることで、ぜんそくが改善する、またモンテルカストが効くことも報告されていますが、治療に反応しにくいことが多いです。
満員の講演会場
ぜんそくとアレルギー性鼻炎
ぜんそく患者はどれくらいアレルギー性鼻炎を合併しているでしょうか。これは国内の研究ですが、18歳以上の患者を対象にアレルギー性鼻炎を合併しているかを調査した結果、約67%という結果でした。つまり7割近くがアレルギー性鼻炎です。鼻炎がある人のほうが重症化しやすいのですが、鼻炎の治療をすると、ぜんそくが良くなる、ぜんそくの治療をすると、鼻炎が良くなるなど互いにつながっています。これをワンエアウェイ・ワンディジーズといいますが、鼻炎と呼吸器の治療を一緒に受けていくと、良くなります。
好酸球とは
白血球の中身には好中球、好酸球、リンパ球といろいろあるのですが、アレルギーの時に増えるのが好酸球です。好酸球性の方が重症ぜんそくに多く、いろいろな薬を使います。また、発作の時に喀痰量が多い人のほうが、学校をや職場を休んだりするような症状が出ます。痰の中に好酸球がある人は、それを抑えれば痰が減るので、そういう治療をします。
外からアレルゲンが入ると、好酸球が増えます。好酸球から障害を起こすいろいろなタンパクが出て、気道の上皮がはがれ、下から神経が出てくるので、冷たい空気、少しの刺激で神経が過敏になり、気管が収縮、分泌物が出るなどしてアレルギー反応が起こります。アレルゲンが入ってくると肥満細胞ができて、肥満細胞にIgE抗体と抗原がくっつくと、ここからヒスタミンやロイコトリエンとか、ぜんそくを起こす物質が出てきます。IL―5、IL―13、IL―4、IgE、これらはぜんそくに関係する物質です。
最近のぜんそく治療
薬を使っても改善しないぜんそく患者に、気管支鏡で気管支の粘膜を焼く治療があります。3回入院して気管を焼きます。やけどは時間がたつと戻りますが、平滑筋だけ戻ってこないので収縮しなくなるのです。
ぜんそくを知ってともに生きていく
ぜんそくは気道の炎症によって気管が収縮する病気で、吸入ステロイド、抗炎症薬が第一選択薬です。自分にどういうアレルゲンがあるかを知って、悪化因子を避け、原因を絶たないといけません。タバコはだめです。喫煙すると薬の効き目が悪くなります。処方された吸入をしっかり行い、ぜんそくをコントロールしていきましょう。
(2019年6月2日 日本アレルギー友の会講演会より、採録冨澤美穂)
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