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    第576号

    ここまで進歩したアトピー性皮膚炎治療③

    NTT東日本関東病院皮膚科部長 五十嵐 敦之先生

    ★新薬デュピクセント★

     最後に新しい治療法についてお話しします。

     乾癬から始まった抗体製剤であるデュピルマブ(デュピクセント)が日本でも認められました。また、ほかにも同様の受容体阻害薬の開発が進められていて、近い将来に承認される見込みのものもあります。この10年間は乾癬の治療薬が多く出てきましたが、これからの10年間はアトピー性皮膚炎に対する治療薬がかなり多く出てくる可能性があります。

     今日はその中でデュピクセントについてお話ししたいと思います。これは昨年から使われるようになり、うちの病院でも50例以上使っています。デュピクセントはIL(インターロイキン)―4とIL―13の両方を抑える薬で、半減期が1週間前後です。投与は、最初に2本打ち、その後は2週間おきに1本ずつ打つというスケジュールで行います。

    ★デュピクセントの効果★

     実際に使った患者さんの事例を紹介します。

     患者Aさんは免疫抑制剤のシクロスポリンを使ってきましたが、この薬は長い間使うと、血圧が高くなったり、腎機能に問題が起きるなどの問題があります。Aさんは1日おきにシクロスポリンを飲んでいましたが、炎症が結構あり、かゆがっていました。今回デュピクセントを使ったところ、4週目でかゆみが治まり、それまで夜眠れなかったのが、眠れるようになったとおっしゃっていました。

     患者Bさんは、アトピー性痒疹という硬いしこりができて、強いかゆみを訴えていた方ですが、デュピクセントを使ってとても良くなりました。4回目を投与した時点で、かゆみが改善され、全然皮膚をかかなくなりました。この方はご本人の希望でいったん投与をやめています。都合5カ月使い、終了して2カ月たっていますが、今のところ再燃することなく経過しています。

     デュピクセントは、既存の抗炎症外用薬で十分な効果が得られない患者さんや、副作用等で使えない患者さんに適しています。また、かゆみに対する効果が非常に良いと思いますし、痒疹ができる方にも効くと思います。

     また、この薬の特徴として、炎症が治まるのに加えてドライスキンが改善し、皮膚がしっとりしてきます。

    デュピクセント

    ★注意点も★

     ただ、副作用として結膜炎に注意する必要があります。うちの患者さんも2~3割の方は結膜炎を起こしています。また、この薬は1本約8万円と、薬価が高いんですね。ただ、この5月から自己注射ができるようになったので、それを導入することによって患者さんの自己負担を減らせる可能性があります。

     また、デュピクセントを使う前に基本となる治療をきちんと行っているかどうかも重要です。症状が悪いからすぐにデュピクセントを使うのではなく、標準治療を適切に行えているかどうか、その効果はどうなのかを見て、それでも良くならなければデュピクセントを使うという姿勢が大事だと思っています。

     実際、私のところに他院から紹介されて来た方でも、ベリーストロングクラスのステロイドの外用だけでかなり改善した方がいます。要するに、それまで病院で正しい外用指導を受けていなかったので、薬をきちんと塗れていなかったのですね。

    ★自己注射★

     自己注射はこのような注射器の形で処方されます。

     これに補助具がついていて、その補助具をはめると針が見えなくなるので、少し恐怖感がなくなります。それを肌に押し付けて、シリンジをぐっと押していくと、薬が入っていきます。しっかり押しきるとカチッというので、手を放すと、ばねの力で自動的に針が抜けていきます。そんなに難しくはありません。

     また、この薬は少し痛いのですが、痛みに関しても、自己注射であれば自分のペースで薬を入れられるので、調整することができます。中には注射の嫌いな方や、自分で注射するのは絶対無理と言う方もいらっしゃいますので、そのような方には難しい面もありますが、この薬は私が今まで三十数年医者をやってきて画期的だと思った薬の一つです。

    (2019年6月2日 日本アレルギー友の会講演会より、採録石塚朋子)

    会員の方にこの講演の資料をお送りいたします。
    事務所まで電話、FAX、メールにてお申し込みください。
    また、講演内容の動画も配信していますので、メールでお申し込みください。

     

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