日本の患者運動はハンセン病や結核の療養所での自治運動から始まったという。高度成長期には公害・薬害への対策や被害補償を求める運動が広がった。より健やかな生活、より良好な療養環境を求める願いがうねりとなって、各地に多くの患者会が誕生した。
一方で近年、活動を休止する患者会も少なくない。患者交流の中心がインターネットに移り、会員減少と会費収入の先細りは各団体共通の課題だ。
ネット上で膨大(かつ真偽不明)な情報が入手できる現代において、患者会が果たす役割は何か。2016年、日本経済新聞にコラムを寄稿した武川篤之理事長は、日本リウマチ友の会の長谷川三枝子会長との共通見解として「当事者同士が寄り添うこと、分かち合うこと」と記している。
「あおぞら」が長年支持される理由もこの点にある。アレルギー疾患は時に、いじめや差別を伴う。闘病体験の共有は多くの患者に「希望」を与えたはずだ。
患者同士だからこそ伝えられる知恵もある。ステロイド外用薬の「適量を塗る」の意味を詳細に説明したり、何十種類もある吸入ステロイド薬の使い方の違いを解説したり。専門医らによる最新情報も充実しているが、やはり患者会機関紙の醍醐味は患者自身による情報発信にある。
「患者代表」の役割も強調したい。近年、医療政策の立案や診療ガイドラインの策定などに患者会が参加し、当事者の声を反映させている。アレルギー疾患対策基本法も法定の協議会委員に患者代表を加えるよう定める。
こうした場では、相談支援やアンケートを通じて何百、何千人もの声を集約して届けるからこそ、行政や医療者も一目置き、耳を傾ける。その点、日本アレルギー友の会には、50年超の歴史と機関紙600号の蓄積がある。
我々メディアも患者会を通じて、患者の悩みや要望を取材することが多い。医師や行政への取材では得られない視点が必ずある。
取材者としてはもちろん、一患者として、アレルギー児の父として、友の会のさらなる飛躍を祈念したい。