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    第600号

    ぜんそく診療の将来展望 ―ぜんそくのコントロールを目指して―

    公益財団法人結核予防会 JATA複十字病院院長 大田 健

     特別寄稿にあたり、認定NPO法人日本アレルギー友の会の機関紙「あおぞら」が600号特別記念号を発行されることを心よりお祝い申しあげます。

     ぜんそくは、可逆性の気道狭窄(気道が狭くなったり正常に広がったり変動する状態)と気道過敏性の亢進(刺激に敏感に反応して気道閉塞を来す状態)という呼吸生理学的な特徴でとらえられてきた閉塞性呼吸器疾患です。そして気道狭窄の結果として、狭い気道を空気が通って生ずる喘鳴(ゼーゼーヒューヒューで表される呼吸音)が聞こえるのが特徴であることは古くから認識されており、紀元前4世紀のヒポクラテスの時代までさかのぼります。しかし、ぜんそくの病態と発症機構の解明が大きな進展をみせたのは最近のことです。

     本稿では、ぜんそくは死なない病気であり、コントロールすることを目標に治療する慢性の病気だという観点から、ぜんそく診療の将来展望について私見を交えて概説いたします。

    1.ぜんそくの起こるしくみ(病因・病態)

     成人ぜんそくでは、約70%に何らかのアレルギーの関与が示唆されており、アレルギー反応が慢性の気道炎症やぜんそく症状の発現に重要な役割を演じています。

     1966年に石坂公成・照子夫妻により発見された免疫グロブリンE(IgE)を介するアレルギー反応は、マスト細胞の表面に存在するIgEがアレルギーの原因物質のアレルゲンと結合して起こる一連の反応です。マスト細胞から炎症性メディエータが遊離され、その炎症性メディエータが作用して、ぜんそくの場合には気道の炎症と狭窄を起こすのです。また好酸球という細胞も炎症には強く関与しています。

     ここで重要なのは、気道の狭窄だけでなく炎症についても治療の対象として認識することです。炎症を鎮めることが、ぜんそくの苦しさの原因である気道の狭窄が起きない状態、すなわちぜんそくがコントロールされた状態につながるのです。そして、完全なコントロール、すなわち健康な人と同じように活動できる状態が多くの患者さんで達成できるのです。

    2.ぜんそくの治療

     私が40年以上前に東大物療内科の宮本昭正先生の指導でぜんそくの診療を開始した頃は、ぜんそくに気道の炎症が重要な役割を演じていることは解明されておらず、気道の狭窄が治療の標的でした。しかし幸いに気道の炎症の関与が解明され、吸入ステロイド(ICS)の有効性と安全性が確立されました。振り返ると現在汎用されているICSに比べて作用は弱かったのですが、その出現は革命的でした。その結果、炎症を抑えることによりぜんそくをコントロールするという長期管理の概念が提唱され重視されました。そして、もっと強力なICSと長時間作用性β2刺激薬(LABA)との配合剤、テオフィリン徐放製剤(SRT)、ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)などが次々と長期管理薬に加わりました。ところがこれらを駆使してもぜんそくがコントロールできない難治性ぜんそくの存在が明らかとなり、新しい治療戦略の開発に目を向けているのが現状です。

    3.新しい治療戦略

     病態の解明を背景に、分子レベルで関与する液性因子としてIgEとインターロイキン5(IL―5)とが先行して分子標的に選択され、それぞれの機能を抑制する抗体製剤が認可されました。さらにIL―4とIL―13の作用を抑制する抗体製剤も上梓され、いずれも適切な症例への投与で効果を示しています。同じ流れで、主に気道上皮細胞から産生遊離される胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)やIL―33を標的とする抗体製剤も開発中です。一連の抗体製剤の成功には、ぜんそく死回避を含む重症ぜんそくの予後改善への期待がかかります。さらに、種々の分子を標的とする薬剤の開発は、個別化最適治療(Precision Medicine)の実現につながることが期待されます。ただし、広い意味での個別化治療は現状の診療でも常に意識することが重要です。その実行には年齢、性別、生活習慣、ぜんそくのタイプと重症度、併存症の有無などを考慮します。また、高齢者の年齢だけでは判断できない老化の評価も個別化対応には必要です。そして、患者さんの側でもご自身のぜんそくの特徴を理解され、健康人と変わらない生活を目標に治療に取り組んでいただくことが最良の個別化治療につながると考えています。

     日本アレルギー友の会とその機関紙「あおぞら」のますますのご発展を祈念しております。

     日本のアレルギーとぜんそくの分野における先駆者で恩師の宮本昭正先生との思い出深い写真を添付させていただきます。

    大田健先生(左)と宮本昭正先生(右)

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