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    第600号

    「あおぞら」600号特別記念 患者の現状や治療の問題点を考え治療の未来を語る座談会

    気管支ぜんそく部門座談会

     気管支ぜんそく・アトピー性皮膚炎の患者の現状を把握するため、多くの方にアンケートを実施しました。

     その結果を踏まえ、気管支ぜんそく・アトピー性皮膚炎の現状や治療の問題点を患者の立場から考え、治療の未来を語る座談会を行いました。アレルギー疾患をもつことの辛さや問題点を社会に伝える充実した座談会とすることができました。

    ぜんそく患者が辛いと思っていること

    息苦しさだけではない

    栗本 私の場合は、ピークフローが下がったまま安定した感じが何年も続いていました。2017年秋にヌーカラを始めると、注射するごとにピークフローが上がって、いい状態が保てています。発作もほとんど起こっていません。ただ、痰がからんだり、咳が出たりはずっとありました。最近、吸入ステロイド薬を増やしたいという希望を私から出しました。テリルジーとオルベスコを足して吸入ステロイド薬の量を増やしたら、ちょっといい感じでした。

     気管支拡張剤のユニフィル、去痰剤のカルボシステインと、抗アレルギー薬のアレジオンと、モンテルカストはぜんそくで使っている治療です。あと、ほかの病気で経口ステロイド薬をずっと飲んでいます。

    池田(前半司会) ステロイド薬を増やしても、口の中の状態とか、悪くなってないのですか。

    栗本 ないですね。粘膜とか弱いかもしれないですけど。そういう症状が昔あって、口腔外科に月1で通っていて、口の粘膜を強くするビタミン剤をもらっているので、そんなに悪くならないのかもしれません。口腔外科から出ているトラネキサム酸とピドキサールを飲んでいます。

    日常生活も社会生活も…

    Y 2019年1月に、風邪から咳が止まらなくなったのです。最初は風邪で病院に行っていたのですが、全然止まらなくて、だんだん眠れなくなって、食べ物を吐く咳になってきたのです。

     終日咳が出て、夜中は肋骨が折れるような咳だから、半泣きですね。一人暮らしでよかったです。家族がいたら家族が寝られなくなってしまいます。

     5月くらいに先生がやっと大学病院に紹介してくれて、エンクラッセが出て、咳は止まりました。6月に咳は止まったのですが、今度は痰が常時出るようになりました。痰が鼻に入って、すごく痛かったです。耳鼻科で取ってもらいました。残業はかなり減らしましたね。

    池田 フルでお仕事をされているのですね。

    Y 正社員で、9時から5時半が定時ですけど、フルフレックスです。

     病院には、課長が「行ってきな」と言ってくださったのです。みんなが普通に働いているので逆に心配されたり、自分だけがほかの人と同じように働けないのが心理的負担になっていました。寝られない、食べられないで6㎏やせました。「休め」という先生と、会社との間で当時すごく困っていました。

     もう一つ不安になったことがあって、痰が出すぎる時は1日にボックスティッシュ2箱とか使って、痰を吐いている状態だったのです。未婚なので、そんな汚いことをしていると、将来結婚相手が現れないんじゃないかと不安になりました。

    池田 咳は落ち着かれたのですか。

    Y 点滴がないと寝られないことがわかってきたので、主治医は今年から結構点滴を入れたんです。でも、決算とかで残業を40時間すると、普通に発作状態に入っちゃうんですよ。今年、ドクターストップを1週間もやっているので、普通の人並みには働けないなと。今は独身ですけど、結婚して家事、育児が増えたら、やっていける自信がないです。

    池田 咳は体力を消耗しますね。私も一時期咳がひどくて、体重が10㎏ほど落ちて、肋骨が折れたことがありました。本当にしんどいです。

    治療の目標をもつのが難しい

    池田 お子さんがぜんそくの場合、目標をどのようにとらえているか伺いたいと思います。

    H うちは症状が出ないことが目標です。それしかない。

    池田 たとえば何かができるようになるとか、そういう目標はありますか。

    H とりあえず受験が終わるまでは絶対症状を出さない。それからは、その後考えていく形です。

    栗本 ぜんそくはコントロールを良くして、健常人と変わらない生活ができるようになる、それが目標だと、製薬会社のサイトなどに書いてあります。でも、全然健常人と同じようにはできません。

     私は、ちょっと動いたりするとSpO2※が下がります。安静に座っている時は下がらないのですが、そもそも普通の人と同じようには生活できません。目標がない感じです。

    池田 目標をもつことは、そんなに簡単なことではないですね。私はほかの人にぜんそくということは話していないのです。ほかの人は、仕事や家のこと、遊びなどで無理がきくのですが、私は若い時からずっと無理ができませんし、常に体調不良ということを気にしながら生活しているので、表向きは健常者と変わらなくても、内心では普通の生活はずっとできないのかなと考えたりしています。

     目標についても、若い頃は元気になっていろんなことをやりたいと思っていたのですが、年齢とともに、普通の人の寿命くらいを全うできればそれでいいかなと、欲のないことを最近は考えるようになり、一日一日、何事もなく過ごせれば、それで幸せかなと思ったりしています。

    Y 私は、結局低い目標で納得した理由が二つあって、目標を考えても辛いからというのと、もう一つ先生から言われたのが、私は今30代なんですけど、もしかして100歳まで生きるかもしれないじゃないですか。そうした時に、今、経口ステロイド薬を使っちゃうと、将来、副腎が機能しなくなっちゃうのでは、と心配になります。一方で、そんなに好酸球も高くないんですよ。今後悪くなった時用に、治療の選択肢を残すことも考えなきゃいけないと思っています。

    治療費の負担 ― 抗体薬は高額

    増谷 助成は受けてないのですが、月の医療費は結構高いので、そのために働いているという面があります。やっぱり働かないと難しい。この体調だとフルタイムにはできないので、自分の体調に合わせながら、ぜんそくの治療費を稼ぐために働いているという状況ですね。

    池田 私はぜんそく以外に慢性気管支炎もあって、一時期、入退院を繰り返していたのですが、その時もできるだけ入院を週末にして仕事を続け、稼いだお金は治療費になり、空しい状態でした。もうちょっと休めばぜんそくも良くなるのではないかと思いますが、実際、生活もあるし、そういうわけにもいかないというところで割り切ってやっています。

    佐藤 東京だと「マル都」の受給者証があって、ぜんそくの方は上限6,000円で治療を受けられる。今、18歳以上の方の新規申請は終了していますが、恩恵を受けている方は少なからずいると思います。でも、地方に目を向けた場合、そういう制度はゼロに近いと思うのです。

     たとえば抗体製剤、どの薬も月平均にならすと何万という高額のものを、地方の方は払っていると思うのです。これからは国も地方の治療に目を向けて、高額な負担をしている世帯に対して何らかの助成をしてもらえるとありがたいと思います。実際、そういう電話相談も友の会に結構来ていますので、大事なことかなと考えています。

    Y ぜんそくの治療費の経済的負担を国が助成して、ぜんそく患者のみなさんが健康な状態で働けるようになったら、税金を納めることもできますし、元が取れない投資でもないと思います。

    武川 今Yさんがおっしゃっていることは、非常に重要なことですね。アレルギー疾患、とくにぜんそく患者と就労問題に関しては、第28回日本産業衛生学会全国協議会(2018年9月)で私が問題提起をしています。

    ※SpO2:経皮的動脈血酸素飽和度

    コロナ禍での対応

    普段の治療が受けられない

    栗本 新型コロナウイルスのワクチン接種を2回受けました。接種を受けたことで重症化は避けられるのかなという期待はあります。

     ただ、私は4年前に重症肺炎にかかりまして、入院して3日くらいで、死ぬような状態からは脱したのですが、ぜんそくが悪くなって、ぜんそくの治療も同時に始めました。今までも風邪やインフルエンザで、ぜんそくだけが悪くなるんです。呼吸器の病気は、いつもぜんそくが悪くなるので、そういう不安はあります。

     今困っているのは、呼吸器内科と総合内科がコロナ対応で、ずっと予約外休診になっていることです。急に具合が悪くなった時に受診できないのです。

    池田 経口ステロイド薬を飲んだ時の副作用に私は非常に抵抗があります。ネブライザーと点滴をしてもらえればすっきりするくらいの苦しさだった時に「ネブライザーを」と伝えましたが、「今、コロナだからネブライザーはできない」で終わってしまった。じゃ、この息苦しさはどうするのだと。せっかく遠い病院まで行ったのに、苦しいまま、何も処方がなく帰ってきてしまったということが2回くらいありました。コロナの影響で、自分の希望しているような治療が受けられなかったのです。

    Y 私は平熱が高いので、よく隔離されます。発作の時を含め、平熱で37.8℃とか、普通にあります。

     それに咳がすごいと、いろんなところから白い目で見られます。今のところ暴力をふるわれたことはないですが。咳をしている人を白い目で見ないでいただけると嬉しいなと思います。

    子どものぜんそく・学校生活

    H(後半司会) 子どもは、どうしても自分の状態をうまく表現できないので、先生に配慮していただかないとほかの子と一緒に過ごせないところがある。そういうところをどうされているのかが、いちばん知りたいところです。

    増谷 うちの子は学校に上がったばかりですが、常に痰がからんでいるんですね。先生への連絡帳に、「痰がよくからむので水分をとるように子どもに言っています」と書いているんですけど、先生にそれを配慮してとは言えないんですね。30人に1人の先生しかいませんし、小学校だと細やかな配慮も得られない中で、みなさん、どうやっているのか知りたいです。

    H 体のことに関して提出する書類があって、それは出していますけれども、そういうのはないですか。

    増谷 一応出しています。痰がからむだけでも、窒息しないかと私はいつも心配になります。子どもは自分のことを言わないので、わからないですね。問い詰めても、どのくらいの程度なんだろうというのがなかなかわからない。自分のぜんそくとは違う意味で悩ましい時がありますね。

    池田 私は子ども時代、ひどいぜんそくで過ごしてきた立場の者ですが、親はすごく心配するのですけれども、自分は、学校で特別扱いされることがものすごく嫌でした。ほかの子の目もあるので。自分だけ先生に「大丈夫?」と言われるのはとても嫌で、ほかの子とできるだけ同じように過ごしたいと、子どもながらにいつもそういう気持ちがありました。

     小さい頃からぜんそくと付き合っていくと、これはまずいぞというのが本人なりにわかるようになるので、ある程度自分から発信していくことができると思います。

     大事なことは、先生に、そういう病気をもっていることだけをきちっと押さえておいてもらって、本人がおかしいという時に適切な対応をしてほしいということが先生に伝わっていればいいかなと、私は感じていました。

    佐藤 自分の話になるのですが、小、中学生の頃、ぜんそくという理由でいじめられていたんです。それも、クラスメートだけではなくて、先生にまでも「おまえのぜんそくはぜんそくじゃない」と、そういう否定的なことを言われてしまって、誰にも助けてもらえないという状態でした。

    池田 体育、とくにマラソンができなくて、いつも見学だったので、先生から罵倒されていました。当時はそういう時代だったので、親に話すこともできませんでした。

     辛いことがあっても、それ以上に頑張れることも絶対に見つかると思うので、保護者の方にはぜひ希望をもっていただきたいなと思っています。

    ぜんそく以外の呼吸器疾患にも

    池田 近年、私は慢性の気管支炎にかかって、同じ呼吸器の病気を複数併発することがあり得るのだなと、初めて気がつきました。ぜんそく以外の呼吸器疾患も併せもって苦しんでいる方とぜひ情報共有ができたら嬉しいです。

    H 池田さんは、気管支炎についてはどういうお薬が出るんですか。

    池田 実はこの慢性気管支炎には教科書的に決められている治療法がないそうで、高濃度のステロイドの点滴を数日間、複数回受けるという治療を行いました。それは先生の経験則で、過去に同じような患者さんに同様の治療をしたら改善したので、やってみようということになりました。それが予想外によく効いて、今ここまで元気になりました。

    抗体薬の効果と副作用

    増谷 ゾレアを始めてから2年になります。以前は悪化のたびにかなりの量のステロイドを内服していましたが、内服の量は大きく減りました。ただ、1年ほど前からゾレア注射の後、倦怠感が出るようになりました。先生に相談し、いくつかの選択肢を検討しました。私の場合、ゾレアの効果を感じているので継続する方法を模索したくて、結果的に注射の間隔を調整することにしました。調整後は倦怠感は軽減してきて、体調をみながら今でも続けています。副作用なのか、自分の体調が関係しているのかは、はっきりしません。

    佐藤 副作用で大切なのは我慢しないで主治医に相談することだと思います。ゾレアだけでなく、どの薬にも言えることです。

    患者の未来・希望すること

    Y ぜんそくは人によって症状が違うから、「何であなたはコントロールがきかないの」と、そういう目で見ないでほしいなというのが一つあります。

     二つめとして、病院の先生って、目線が患者と全然違うんですよ。でも、そこを通してしか、つまり病院にしか相談先がないことも多いかと思います。心配されすぎていろいろと動かれてしまったので、会社には途中から相談できなくなりました。あえて相談先をいろいろ見つけておくことはすごい大事だなと思いました。途中から相談先は、友の会を含めて愚痴を言う先でもいいので、何個ももてたことですごく気がらくになりました。

     もう一つ。医師に「喘鳴がなければ大丈夫」と言われてしまい放置されました。「痰はぜんそくの診断に関係ないから」と言い切られてしまったこともありました。辛さは、数値とか検査値だけではないと思います。痰は確かにぜんそくの診断基準にはないとは思いますが、もうちょっと寄り添ってほしいなというのはありました。

    武川 私どもの会は、Yさんが言っているように、私がこう治ったからあなたもこうすべきだとか、こうしたらいいとかいうことは絶対言ってはいけないことにしています。というのは、私が良くても、あなたの場合は違うから、あくまで参考に、主治医と相談する際の知識としていただきたい。

    栗本 私はほとんど発作が出ていないので、見た目は何ともないわけですよ。だけど、普通の人と同じには動けない。吸入ステロイド薬を使えば普通の人と同じようになるんでしょう、治るんでしょうみたいな、そういう考えもあるかもしれないです。確かに吸入ステロイド薬が出てからみなさん、状態が良くなっているとは思うんですが、それでも普通の人と同じにはできない人がいるということを理解してほしいということです。

     吸入薬は、デバイスごとに空打ちの回数が違ったり、カウンターが異なったりして、使い終わりがわかりにくいものがあります。せめて将来的にそういう煩わしさをなくしていただけたらいいなと思います。

    Y 将来、これ以上悪くなった時に、現在の治療でなかなかうまくいかない人用の薬が今後出てくればいいなと思いました。

    武川 いろんなものが出てきますから、大丈夫ですよ。

    (採録 桜井修子)

     


     

    座談会を拝読して

    上野 光子

     座談会を拝読して、一言では表現できないみなさまの症状や悩みを感じました。

     私はぜんそく歴約60年、今でも風邪は怖いと思っています。発症した当時、日本にただ一つのアレルギー科のある同愛記念病院に入院して、当時の主治医が風邪などの感染症状には内服のステロイドと抗生物質が早く効くと言われた言葉は、現在も頭から離れません。今の主治医も風邪(感染性)の時はステロイドと抗生剤を処方してくれます。ステロイドの副作用が心配で、少し回復したと思う時点で早期に薬を切って、中途半端に薬を使ったために呼吸が詰まったり、いつまでも痰がからんで治りきらない症状が続いたり、私も何度も失敗して悩みました。これらの薬は症状がなくなるまでしっかり使うことが大切だと思っています。また、症状をきちんと伝えること、それを理解してくださる医師を選ぶことも大切です。

     お子様のぜんそくは吸入ステロイドをきちんと使用し、普通の生活ができるといいですね。すると次第に抵抗力も出て、吸入ステロイドから離れられる時期もきっとくると思います。

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